胸に残る一番星 | ナノ

  旅は道連れ世は情け


 初対面の青年と洞窟内をさ迷っている。理由は単純、鉱石目当てでここに来たものの魔物に追われて仲間とはぐれてしまったからだ。そうしてたまたま出会ったこの青年も似たような理由らしく、俺は仲間が見つかるまで同行しないかと申し出た。青年は大きなフードがすっぽり顔を覆っていて、しかし鋭い眼光は隠しきれていない。こちらに対する警戒心もバリバリにあり、何で了承してくれたのかは不明だが、一人でいるよりはマシなので深くは考えないことにする。

 ここに来るまでの話を軽くしながら歩いていると、狭いでこぼこ道の端に宝箱を発見した。迷っているのもあるが、すでに数時間はこの洞窟にいるのに何一つ鉱石は得られていない。せめてお宝でも頂戴したいと思い近づくと、「おい、気をつけな」と声を投げられた。

「もしそれがミミックだったら、あわや即死だぜ」
 それでも取りたいなら、ま いさぎよく自分の運を試すんだな。

 冷静なような少し面白がってるような声音に、思わず宝箱から飛び退いた。何事もなかったかのように先へ進む青年の後を慌ててついていく。…なかなか恐ろしい奴に同行を求めてしまったんじゃないか、俺は。

 そのあと俺は更に驚愕することとなる。
 青年が、探していた仲間と再会出来たのである。

「イレブン! 無事か!?」
「あっカミュ! 良かった、無事で…!!」

 この青年の仲間なのだからガラが悪い奴らで多勢に無勢となったらどうしようか、と内心ヒヤヒヤしていたが、杞憂だった。幼い顔をした、ともすれば少女と見間違えそうなサラサラヘアーの少年は、感動の再会とばかりに青年に思いきり抱きついた。フードを外して珍しい青髪を晒した青年は、何ともやわらかな表情をしている。

「ごめんね僕が変なとこ行くから…」
「ほんとにな…。ていうかお前、ボロボロになってねえか…? まさか…」
「…えへ。宝箱開けまくっちゃった」
「…お前なあ、ここはどう見てもミミックが多いから、せめて開けるときはオレがインパスしてからにしろって言っただろ?」
「だってあったら開けずにはいられないもん…」
「まったくしょうがねえなあ…」
「…ところであの人は?」
「あ、忘れてた」

 とここでようやく俺は認識された。忘れられていたらしい。いろいろ突っ込みたいところは抑えて、一体この光景にどんな顔してどんな対応したらいいものか、そこそこ歳を食ったはずなのにわからない。青年が俺のことを軽く説明すると、少年は慌ててこちらに寄ってきた。

「すみません、カミュがお世話になったみたいで…」
「世話にはなってないけどな」
 確かに。とりあえず苦笑いしていると、少年は「あれっ」と声を上げて突然俺の腕を取った。

「お兄さん、ここ怪我してますよ」

 有無を言わさずホイミをかけられた。サラサラヘアーの少年が使えることにも、使われたことにも驚く。案の定青年の方はよろしくない顔をしているが、それに気づかなかったフリをしてお礼を言った。
 
「やれやれ、お前はほんとにお人好しだな…」
「だって旅は道連れ世は情け、ってテオじいちゃんも言ってたよ」

 他意もなく、屈託もない笑顔を見せられた。なるほど、こんな相棒がいたとなってはこの青年も厳しくならざるをえないのだろう。…少年に、ではなく周囲に対して。
 それにしても何だか何かを見せつけられたような気がして、ああ早く家に帰って風呂に入りてえなあ…と思ったのだった。




脱出ゲーネタ…エアプですが許して…塩対応されたかったんや…
180814

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