胸に残る一番星 | ナノ

  頼むぜヤ●ト……!!


「うう、ううっかみゅう〜〜」

 イレブンがめそめそしている。基本的に前向きな彼がここまでしょげるのも珍しく、ただでさえ彼を放ってはおけない性分のカミュはどうしたものかとおろおろしている。自分がどうにか出来ることならとっくに行動に移しているが、こればっかりはどうにも、どうにも。

「まさか、二日経っても届かないなんて…」
「そうだな、遅いな…」
「いつもそうだ……イシの村では、発売日に手に入れることは叶わないんだ……!」

 ボクらの旅の思い出兼、グラビア兼、いんたびゅう雑誌を早く読みたいのに!

 ううっ、と抱きついてくるイレブンの背中をよしよしと撫でる。彼の悲しみの理由であり、今最も欲している雑誌。それは自分たちの旅の記憶と記録である。

 すっかり平和になった世界で、勇者一行であるあなた方の旅をかたちにしたいとブ●ジャ●プ編集部なるところから依頼され、みんなで引き受けたのももう懐かしい。あれこれ尋ねられて洗いざらい話したものだが、それらがまとめられた珠玉の一冊を手に取る日を、イレブンはそれはもう、楽しみにしていた。

 しかし納品予定日は確かに一昨日だったのだが、まだ我が家には届かないのである。あいにく仕事が続いていてルーラで飛ぶことも叶わず、家で悶々とする日々だ。二人で住む家の場所として、都会よりはやっぱり田舎のが落ち着くなあというイレブンの願いでイシの村の外れにしたのだが、まさかこんな弊害があったとは。

「みんな質問にどう答えたかとか、読んでのお楽しみって教えてくれなかったし……こんなに気になるのに……」
「おいおい凹むなよ、もう少し待とうぜ、な? それに、何かオレや皆に聞きたいことあるなら直接聞けばいいじゃねえか」
「……ありがとう……でも違うんだかみゅ、ボクは、ボクはいんたびゅうという体で他人にボクとのことをノロケる君が見たいんだよ……!!」
「お、おう……早く届くといいな」
「うん……」

 カミュとて楽しみにしていないわけはないのだが、どっぷり落ち込む相棒を元気づけたいという気持ちの方が先行する。今夜は暑いけど景気づけにシチューでも作ろうか。

 ああ早くこいつのために届いてくれねえかな。





祝・ワンドロライ100回目!おめでとうございました!
そしてキャラブがまだ届かないかなしみ!!!!!!!
190728

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