はーとふるらいふ | ナノ


▽ ミーハートラップ



「…二十八、二十九、三十。」

溝口コーチから渡された仮入部届けを数え切り、なんともいえない複雑な気持ちになった。これからもっと部員が増えていくか、練習が厳しくて減っていくか。

どっちにしろもう少し勧誘を頑張らなければ。国見の言うとおり自分が悪いのだろうか。仏頂面なのは認める。窓にうっすら映る自分を見て、笑顔を作ってみせた。いつも自分は国見などと話す時こんな表情をしているのかと苦笑した。

「遥ー!何してるの?それ仮入部届け?」

きゃぴきゃぴと今時の女の子を表すような短いスカートに染めたキャラメル色をなびかせて教室に入って来たのは、自分の唯一の友達であり親友。笹谷亜梨沙だ。いつも明るく高いテンションだが今日は一段と高い気がする。

「うん、亜梨沙のテニス部はどうなの?」
「んー、まあ結構いるよ。部員少ないから全員そのまま入部してほしいけど…というか聞いてよ!女子が席替えしたいっていうから席替えしたら及川くんが隣になっちゃったの!きゃー!!!!」

亜梨沙は頬に手を当てて嬉しそうに顔を赤らめた。今日は一段と明るい理由はこれだったのか。始業式の時は及川と同じクラスになれたとかで倒れて保健室に行ったからまだマシな方だ。仮入部届けをまとめようとしたら一枚落としてしまった。拾えば国見の仮入部届けで微笑んでしまった。

「なにー?国見……えいくん?」
「あきら。中学の時の後輩。」
「金田一事件簿くんじゃなかったっけ?青城に来るって言ってたの。」

何という覚え方をしているのだ。確かに自分もそれで覚えたが突っ込んだら亜梨沙の思うツボなので無視した。

「勇太郎もだけど英が青城来るなんて全然知らなくてさ。」
「サプライズなんだね!あの子はあの子!トビウオくん!前写真見せてくれたでしょ?」
「あー飛雄は烏野に行ったよ確か。昔はバレー強かったみたい。」
「へ〜一度会ってみたいなートビウオくん」

飛雄が中学一年生で結構前の写真だったが亜梨沙は飛雄が気に入ったようだった。この子は将来イケメンになるねとか自信気に言っていた。最近会っていないがどうなのだろうか。目つきが悪くなった気がするが。

「…今日、ケーキ屋行こう。」
「え?」
「モンブラン食べたい。」



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