十一月に入ると、十二月、一月の寒さに耐え切れるなのだろうかと思うくらいかなり寒くなった。この時期になると、クィディッチ・シーズンが到来する。クィディッチなんて飛行嫌いの私が興味がある訳がなく、怪我をしたり落ちたとこなんてこの目で見たら私は一生箒に乗らない自信がある。クィディッチの試合を観戦する予定は、一生無い。
「不格好だな、見てみろアイツの頬」
目の前に現れた神経を逆撫でる声に、チッと舌打ちをして歩いてきた場所を戻るように方向転換した。顔は傷がよく残るもので、頬の傷は綺麗さっぱり治る様子は無かった。ポンフリー先生には女の子なんだから隠した方がいいと言われたが、それもそれで不格好だ。
「ポッターやウィーズリー、グレンジャーはやっぱりロクなやつじゃないな!」
大声で言うドラコに私はぴたりと動きを止めた。振り返ればドラコは言い返してみろよというように口角を上げていた。
小さくため息をついてドラコに言った。
「貴方よりはましだと思うわ、ドラコ。」
かなり図星だっただろうことを言えば、ドラコの両隣に立っていたクラッブとゴイルが吹き出していた。赤くなるドラコに私も笑って、その場を去った。
その夜、私は談話室の隅で魔法薬学の勉強をしていた。みんなまだ先だと言うだろうけど、試験があるからだ。なかなか進まなくて、スネイプ先生に質問しに行こうと教科書を片手に職員室に向かった。
「…あら?ポッター?」
職員室の前でポッターが立っていることに気づいた。彼も先生に質問することがあるのだろうか。
「スネイプ先生に本を返して貰おうと思って…ノックしても反応がなくて。」
私は何故職員室に来たのか、私の格好を見てポッターはすぐ察したようだった。もしかしたら会議などをしているのかもしれないと、私とポッターは少しドアを開けて中を伺った。
そこには、スネイプ先生とフィルチ先生しかいなかった。血だらけだった、スネイプ先生の片足が。フィルチ先生はスネイプ先生に包帯を渡しているようで、スネイプ先生の片足を目を疑うようにして見た。あんな大怪我…。
「いまいましいヤツだ。三つの頭に同時に注意するなんて出来るか?」
「三つの頭…?」
ポッターがいけないものを見たというかのようにドアを閉めようとした。が、スネイプ先生が私達に気づいて大声で名前を呼んで傷を隠した。
「本を返して貰えたらと思って…」
「出て行け!失せろ!」
スネイプ先生が大声で私達を怒鳴ると、ポッターは私の腕を掴んで全力で疾走した。グリフィンドールの寮だろう場所の近くまでつくと、私達の息は絶え絶えだった。
「本、返して貰えなかったわね。よかったの?」
「ミーリックこそ…そうだ、ハーマイオニーに教えて貰うのはどう?」
「え…」
ポッターが言った言葉に耳を疑った。グレンジャーに?それはグリフィンドールの寮に入ってということなのだろうか。
「いや…普通、各寮は秘密なのよ…?」
「ミーリックは人に話したりなんてしないでしょ?」
それは遠回しに話す人が居ないだろうと言われてる気がしたが、グレンジャーには聞いてみたいものだったからじゃあ…と返した。
「あ、合言葉言うのよね?ちょっと待って、耳を塞ぐから。」
「…ミーリックって結構優しいよね。」
…あぁ、トロールが現れた時、グレンジャーにも言われた言葉だ。事実じゃない言葉に罪悪感を感じる。
「…そんなことないわ。」
ゆっくりと、耳を塞いだ。
「…成る程ね、グレンジャーはそう考えるのね…」
グリフィンドールの談話室、窓の近くでグレンジャーにポッター、ロンに囲まれて勉強をしていた。始め談話室に入った時は他の生徒の目が痛かったが、次第に私に話しかけてきてくれた。スリザリンと違って、いい意味で、賑やかな談話室だ。
「その傷…トロールと戦った時のだよな?」
ロンが私の頬の傷を見て申し訳なさそうに言った。かなり目立つ場所だったので、この話題は避けて通れないと覚悟していたがこのタイミングだとは。
「ご、ごめんなさい…私のせいで。」
「別にグレンジャーのせいじゃないわ。それに…勝利の証みたいでかっこよくないかしら?」
少し自信げに言うと、三人は呆然と黙り混んでしまった。い、今の寒かったかしら!?だ、ダメだったかしら!?すると三人は同時に吹き出した。
「ふふ…ミーリックってそういうこと言ったりするのね。」
「いっ、言っちゃ悪かった!?」
最悪だわ…恥ずかしい…調子乗って言うんじゃなかったわ…。先程の失言に後悔して赤くなりながら俯いた。
「ねえ、明日のクィディッチの試合、見に来てくれる?」
「え…」
見に行く予定なんて一生無かったが、ポッターが返事を楽しそうに待っていたので断ることは出来なさそうだ。
「…わかった、見に行くわ。明日、気をつけてね。」
「…!ありがとう!」
それからまたポッター達とお喋りしてから、フィルチ先生にバレないようにスリザリンの寮に戻った。