師の教えてくれた事。
 それはいかにして戦を起こさず、平穏に事を治められるかと言うものだった。
 それに伴い政治についても学ばされ、頭に叩き込んだ。
 戦とは、政治の延長線上にある、と師は言う。回避する為には精一杯の外交努力をせねばならない、と。
 師の言葉ひとつひとつを胸に抱き、近々時代を変え得る男と面会する事になった。

(私は、貴方の期待に答えられるでしょうか……)

 心の中で質問してみるが、答えが返らぬのは解っている。

(この避け切れぬ戦、何としても勝利してみせます)

 珂縹は拳に力を込め、開いていた本を大きな音を立てて閉じて、その場を去る。
 自分に“粲惟(さんい)”と言う字を残してくれた師に、最後の別れを小さく言って。



頭(かぶり)を振って いざ徃かん
対峙するるは 我が母国
我が陣営は 寡兵なれども
心中 希望に溢れたし
我が胸の高鳴り 早鐘の如し

頭を振って いざ徃かん
その法 正に神業なり
死地を生地に変革し
声高に奏でるは 勝者の詩よ
我が胸の高鳴り 早鐘の如し

届けや 響けや 御覧あれ
蒼く清んだ 天の彼方へ
我が知識を 智慧とすべく
我が智慧を 輔弼とすべく
只今 天下への戦を始めんとす


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