elf
 世に、神話と呼ばれる民間伝承は、星の数ほど存在する。
 その中には、強大な力を持つとされる剣も数多登場するが、この剣も、その中に加わるべき物だった。
 だが、何故今までその名を知られておらんかったかと言えば、誰にも使い熟す事が出来なかったからた。
 あまりにも強すぎる力は、近寄るだけで人を惑わせ、よもや鞘から抜き放つような事があれば、その者は一瞬にして心を食われてしまうだろう。我々は、この剣が原因となった戦を数々見て来た。
 先の大戦より少し前、ついに我々は剣をあの岩塩坑へ封じる事に成功した。
 だが、奴らは必要に我々を追い回し、仲間の一人からその在りかを聞き出した……が、剣は今、この部屋にある。
 奴らが勝手に分裂し、全ての資料を持って闇に消えた男がいたそうだが、定かな話ではない。
 とにかく、その男のおかげで、今再びの大戦を避ける事が出来た。
 我々の存在意義。
 それはこの剣を護る事。
 ひいては世界の秩序を護る事なのだ。


 話終えると、長老は徐に剣の刀身を鞘の上からを撫で、いきなり右手で柄を握り締め、引き抜いた。
 「心を食われる」と、今しがた話された所で、ヒルデは小さく息を飲んだ。
 しかし、何も起きる気配は無い。

「……今の、全て作り話だったのね?」

 柳眉を逆立てながら、ヒルデは長老を軽く睨む。
 すると視界に抜き身の刀身が入り込み、視線はそちらに引き寄せられるように移動した。
 仄かに赤身を帯ており、通常の鋼では無うのが解る。
 それに、青銅器等にみられる赤さとも違い、輝いているように見えた。

「我々は特別だ。我々は、この剣を鍛えた鍛冶屋の末裔なのだからね」

 長老は再びニッコリと微笑んだ。

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