昔々ある所に、突如近くの森に現れた狂暴な魔物を恐れる日々をおくる小さな村がありました。
 その魔物は剣を通さず、銃弾も跳ね返す強靭な鱗に覆われており、毒の息を撒き散らして生きた物を次々と死に追いやっておりました。
 長老は一計を案じ、国王に上訴。
 国王はこの小さな村を哀れみ、魔物討伐に騎士団を送り込みました。
 しかし、国随一の騎士団員でさえ魔物には敵いません。
 国王はこの事態を深刻に捉え、国中にお触れを出しました。

『魔物を討伐した物に、金貨一万枚』

 この事で、国中の賞金稼ぎが村に集まり、魔物退治に向かいました。
 しかし、誰一人として戻る者はいません。
 長老が諦めかけた、その時。
 すらりとした若者が村を尋ねて来ました。
 その若者は剣を帯びてはいたものの、今まで村を尋ねて来た戦士達から比べると貧弱で、万に一つも勝てる見込みがなさそうな姿でした。
 長老は若者を止めましたが、その言葉に耳を傾ける事無く、若者は一人、魔物退治に向かいました。
 無駄に命を捨てるなんて、と残念がる長老でしたが、数日後、見込み違いだったのだと思い知らされます。
 何と若者は魔物の前足を村に持ち帰って来たのです。
 何人も傷を付ける事が出来なかった魔物の黒い前足。
 若者は魔物を退治したのです。
 その事で村は沸き立ちました。
 三日三晩お祭り騒ぎが続き、若者を讃えました。

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