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街にたどり着いたのは、まだ日が高い正午過ぎだった。 だが、その街に人通りは疎らで、纏っている空気は暗い。
「この街は夜の街だ。昼間のうちは静かなもんさ」
一歩先を歩くリーが言った。 私はキョロキョロと辺りを見回しながら、その後を追う。 王都から西へ数十キロ程しか離れていない街のはずなのに、この寂れ具合は如何だ。 いくら夜の街とは言え、静か過ぎる。
「何処かに武器屋は無いか。剣が欲しい」
銃との相性が悪い。 自衛出来るようになれと言うが、まだ剣の方がいい。
「今時剣ねー。売ってるか如何だか解らんぞ」
「武器屋に剣が無くて何が武器屋だ。世の中にはまだ銃を使いこなせない人間も沢山いる。……はずだ」
首を竦めながらも、リーは私を手招きしながら歩みを進める。 大きな通りに出ると、左に曲がった。 多分この街一番の目抜き通りだと思われるのだが、人はいないし店も開いていない。 武器屋があっても、開いているのか怪しい。 暫く行くと、リーは再び道を左に曲がり、やっと一人が通れる程度の小さな脇道に入った。 建物と建物の隙間にあり、薄暗い。
「おい、何処へ行く気だ?」
私は前を行くリーの背中に声をかける。
「剣を置いてそうな武器屋だ。今時剣なんぞアンティークだぜ」
お前の銃もアンティークじゃないか、と私は心の中で呟いた。 [*←] | [→#]目次 |