遠くから、まだ散発的に銃声が聞こえる。
 だが、かなり治まって来ているようだ。
 私達が案内されたのは一階の、広々とした居間だった。
 今はただの飾りになっているが、大きな暖炉が目を引く。冬になれば、暖かな炎が心を癒す事だろう。
 ふかふかなソファーに腰を下ろし、やっと一息付いた所へ、リーが再び姿を現した。

「クーデターは成功したようだ。時期にこの屋敷にも誰かやって来るだろう」

 リーは腰に手を当て、ふっと溜息を吐く。

「どうするつもりだ。私達がここにいたのではお前にとって良い影響は無いだろう」

「お供の中に“生贄”になろうって方はいらっしゃいませんか」

「イケニエって……。何をするつもりだ」

 私は声を荒げたが、リーは全く気に止める様子も無く、壁にもたれ掛かりながらつまらなそうに回答を待っている。

「つまり、我々の誰かが貴方に捕まれば良いのですね。貴方が弟君側の人間だと思われれば、王子がこの屋敷に居るとは思われない」

「そう言う事だ。で、誰が行く」

 暫く沈黙した後、二人の手が上がった。
 その時、私は彼らを止めるべきだったのか。
 だが、彼らは私に背を向け、リーと供に扉の向こうへと消えて行った。

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