東風が街を吹き抜けて行く、三月の朝。 私は真紅の花束を片手に、その街を歩いていた。 ポケットにはプレゼント用に包装してもらった懐中時計が入っている。 カフェンが令華に支払った物よりは安いかも知れないが、私が今彼女へ贈る事の出来る最上の品物であるのは間違い無い。 朝、カフェンは礼拝の為に教会にいる。 私や令華には一番似つかわしく無い場所だが、今日くらいは足を踏み入れようと思う。 花の甘い香を胸に、私は教会の樫で出来ている扉を押し開いた――