屁理屈 (多所普) 「世界で一番愛してるなんていう奴、信用できないと思うんだよね」 そう言ったのがひびきや秋良なら、俺も素直に理由を理解しようとしただろう。けれど、「お前自体が信用できねぇよ」と彼に返した言葉の通り、本人は愛を語る資格なんてないような人間だ。 明るい髪の毛に女の子のヘアピン、隠してるけど俺以上につけてるピアス。本人でさえ把握仕切れているのか怪しい女性関係は、仲間内では周知の事実。 ちょっと痛くて馬鹿丸出しのこいつが何故モテるのか、長い付き合いの俺にも未だわからない。 「えー、どの辺りが信用できないわけ?」 「全部だよ、全部。格好から言動まで全部」 「それはアマネくんの中で、でしょ? 女の子は違うんだって!」 熱弁する遊馬は軽い身振りまで加えてるけど、説得力の欠片も見当たらない。真乃だって絶対、俺に同意するはずだ。 あまりに煩いから、「どう違うんだよ」と、仕方なく尋ねてやる。聞きたい訳じゃないが、話したいだろうから。 「冷静に言葉を考えるとさ、世界一って、誰かがいてこそじゃない? 世界中の女の子と比べて、君が一番だなんていっても、そのうち一番なんて変わっちゃうんだよ」 「屁理屈だな」 「違うよー」 「じゃあ何て言えば正解なわけ?」 呆れながらも返してやると、遊馬は自信満々にこう答えた。 「俺には君しかいないんだ、が最強!」 「ほんとかよ」 「ホントだよっ!」 「じゃなくてよ、女にそう返されねぇの?」 「返されたことはないよ。ていうか、本心だもん」 ホントこいつは呼吸をするように嘘を吐く。と、思っていたけど、少し違った。 「その時間の相手は目の前の彼女だけなんだから、俺は嘘は言ってないもんね」 「やっぱ屁理屈じゃん」 END →/menu [← | 少女 | →] |