不穏な始まり(14)




「リンは何も言わないのか? 黙ってそれを受け入れてるわけ?」



 ヨシノ氏がゆっくりと顔を上げた。ハリーも発言者を見る。双子のどちらかだった。みんな ――― 双子の片割れも含めて、彼を見つめた。



「………君は、まだ発言していない子の方だね」



 ヨシノ氏の言葉に頷いたのを見て、ハリーは彼がジョージだと知った。今まで見たことのない、真っ直ぐな目をしている。



「リンは、文句を言わないの?」


「……おそらく、慣れてしまったんじゃないかな」



 寂しそうな顔でそれだけ言い、ヨシノ氏は立ち上がった。



「そろそろ行くよ。リンが見つかったみたいだからな」



 スイを肩に乗せ、ヨシノ氏は杖を取り出した。



「それは、リンが買ったものだな?」



 ヨシノ氏はフレッドとジョージの側に置いてあった本の山を指さした。双子が揃って頷くと、杖でそれらをパッと消し、そのあとみんなに軽くお辞儀をした。ウィーズリー氏には特別深く頭を下げる。



「アーサー、連絡を本当にありがとう……では皆さん、さようなら」



 ヨシノ氏は静かに漏れ鍋を去った。みんな呆然と彼を見送った。



「……なんで、見つかったって分かったんだ?」



 ロンがみんなの気持ちを代弁した。ウィーズリー氏も首を傾げていたが、考えるのをやめたように、笑みを浮かべる。



「まあ……何にせよ、見つかったようで、よかったんじゃないかな?」


「……そうですね」



 みんな納得はいかなかったが、ウィーズリー夫人がいち早く夫に同意し、立ち上がってパンパンと手を叩く。



「さて、買い物の続きをしましょうか? 急がないと大変よ! 何しろ量が多いから」



 次は何が必要なのかしら? と首を傾げながらテキパキとみんなに指示を出す夫人に促されるまま、ハリーたちは紅茶を飲み干して立ち上がる。


 ハリーの視界の端で双子が何か話し合っていたが、ウィーズリー夫人に声をかけられて ――― 彼らにしては珍しく ――― すぐ彼女に従ったので、何を話していたのか、ハリーは分からなかった。


 ただ……これも珍しいことだったが ――― 二人がかなり真剣な表情をしていたのが、ハリーの印象に強く残った。



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 やっと終わり。初めから長くてすみません。



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