不穏な始まり(12)




「スイ、そう気に病むな。すぐに見つかるさ」



 ぽんぽんとスイの頭を撫でたあと、男性はテーブルについている一同を見渡し、口元に笑みを浮かべた。



 太陽みたいな笑顔だ。ハンサムな分よく似合っていて魅力的だ。現にハーマイオニーとウィーズリー夫人が頬を染めている。



「初めましての人が多いな? 俺はアキヒト・ヨシノだ。アキでいい。どうぞよろしく」


「私の同僚の一人だ。ボーンズの……あー、魔法省の魔法法執行部に勤務している」



 ハリーとグレンジャー一家のために、ウィーズリー氏は付け加えた。

 紹介を受けて、ヨシノ氏は丁寧に頭を下げた。ミセス・ヨシノと同じように、彼もローブではなくスーツ姿だったので、ハリーたちマグル出身者は彼の挨拶を受け入れやすく感じた。

 ヨシノ氏は空いている席に腰を下ろして、溜め息をついた。



「姉さんの行動には、本当に呆れるしかないよ」



 ヨシノ氏の声色には、疲労感と悲壮感が漂っていた。



「リンが一人でロンドンから日本へ帰れるわけない……アーサー、知ってるだろう? 煙突飛行ネットは国を越えては結ばれてない。そりゃ、うちの一族は、魔法なしで瞬時に長距離を移動する術を持ってはいるが……子供一人では、危険すぎる」


「ああ、分かっているとも。君の都合がつかなければ、リンを我が家に連れていこうと考えていた」


「それ最高だぜ! パパ、そうしよう」


「お黙りフレッド!」



 フレッドが明るく言ったが、ウィーズリーおばさんに叱られて引っ込んだ。ヨシノ氏は力なくお礼を言った。



「そう思ってくれていたなんて嬉しいよ、アーサー。……けど、今回は連れて帰る。今度という今度は、姉さんと話さないと」


話す? 話し合って何になる、え?



 ハグリッドが突然立ち上がって大声を出した。他の客の視線も集まったので、ウィーズリー氏が「落ち着いてくれ」と諌める。ハグリッドは椅子に座り直して深く息を吸った。



→ (13)


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