金の卵の謎 .2 「拾いに行ったらどうだ?」 「そうだね。もう充分に温まっただろうし」 頷いて、セドリックは大きく息を吸い、湯に潜った。もはや温めることは前提として決まっているらしい。温める程度で解ける謎とは思えないが……と、ジンが心中で呟いていると、湯の中から気泡が現れた。 ゴボゴボと、何か音のようなものが聞こえてくる。不思議に思ったジンが湯に潜ろうとしたとき、水面からセドリックの頭が現れた。思わずジンは後方へと下がった。 「ジン、水だ! 水だったんだ!」 「は?」 「水の中だと、音が声になるんだ!」 なにやら興奮した様子で言って、セドリックは再び水中に潜った。残されたジンは混乱状態に陥って硬直していたが、ふと我に返って、言葉の意味を考え始めた。 どうやらセドリックは、水の中で、何かの拍子で卵を開いたらしい。すると、恐ろしい悲鳴がきちんとした声に聞こえた。そこで、卵に秘められたヒントを得るために必要な条件は水だったと気がついた。こんなところだろう。 「……やはり、温度は関係なかったじゃないか」 ジンが呟いたとき、またセドリックが浮上してきた。水面から顔を出し、目にかかる髪を指で払う。うれしそうな顔をしていた。 「何か分かったか?」 「ああ。地上では歌えないものたちが、僕の大切なものを奪うらしい。僕は一時間以内に、彼らの声を頼りに探して、奪われたものを取り返さなくちゃいけない」 「地上では歌えないもの?」 「この歌声の主だとすると、水中生物だと思う。水の中で人の言葉を話せるもの……待てよ」 ぷかぷか立ち泳ぎをしながら、ぶつぶつ呟いていたセドリックが、不意に止まった。口を開こうとしていたジンが、黙ってセドリックを見やる。彼は、壁に掛けてある人魚の絵を凝視していた。視線を受けて、人魚がクスクス笑う。 「……ジン、ホグワーツの湖には、マーピープル(水中人)がいたりするかい?」 「ああ、いるぞ」 ジンが肯定すると、セドリックは目を輝かせ、はにかんだ。第二の課題についての情報を無事に得ることができてうれしいらしい。ジンは静かに「おめでとう」と祝っておいた。 しかし、新たに出現した大きな問題には、いつ気づくのだろうか……。内心で少しだけ呆れながら見ていると、不意にセドリックの顔が硬直した。ゆっくり笑顔が消えていく……どうやら問題点に気がついたらしい。 「……ねぇ、ジン……人間が一時間も水中に潜り続けられる方法って、あるのかな」 「さあな。それを見つけ出すのが、本当の課題なんだろう」 火照った顔を青白く変えたセドリックに、ジンは素っ気なく言った。 |