彼との友情論(4)



「……あー、疲れたー」


 レイブンクロー生が見えなくなったところで、リンは天井を仰いで息をついた。


 なんだかんだ頭を使った気がする。ただでさえ試験勉強で疲れているのに、何ということだろうかと溜め息をつくリンに、ネビルがそろそろと声をかけた。


「……あの、リン? 大丈夫なの? 今の、レイブンクローの子たちだよね? あんなこと言って……今度授業で一緒になったときとか、気まずくない?」


「平気だよ。私たいていハンナたちといるから、彼らとはそんなに関わらないし」


 クスクスと笑い、リンはネビルへと向けた目を細めた。


「それより、さっきの続きだけど、私は、一緒にいるといいことがあるとかないとか、そういう理由で友達を作ってるわけじゃないよ」


「……でも、できれば迷惑をかけない子が友達の方がいいでしょう?」


 沈んだ声で言うネビルに、リンは溜め息をついた。だからどうしてそう、悪い方向に考えるのだろうか。


「じゃあ、ネビル、さっきの私を見たでしょう? 同級生にあんな嫌な態度をとる私と友達でいるのは、もう嫌?」


「そんなことない! 僕、リンと友達ですごく嬉しいよ!」


「うん、私も」


 リンが笑うと、ネビルも少ししてから、ぎこちなく笑った。それを見て、リンは緩やかに目を細める。


「……ねぇ、ネビル、誰にも迷惑をかけない人なんて絶対どこにもいないよ。どんなに努力をしたって、みんなどこかで失敗してしまうものだから。ネビルが迷惑をかけないようにって一生懸命頑張ってるの、私、ちゃんと知ってるよ。それに、ネビルが気づいてないだけで、ネビルのいいところなんてたくさんあるしね」


「本当?」


「うん。そうだなぁ……まず優しい。さっき私に『話しかけないで』って言ったのは、私まで悪く言われるのを防ぐためでしょう?」


 ニッコリ笑うリンに、ネビルが顔を真っ赤にする。リンは目を柔らかく細めて続ける。


「勇気もあるかな。あんななかなか言えないことを言ったんだから。あと、粘り強いところもあるかも。トレバーがどれだけ逃げても、いつもちゃんと探し出すから」


 ほら、たくさんあるでしょう? と微笑むリンの言葉を、ゆっくり時間をかけて理解したあと、ネビルは、頬をピンク色に染めてはにかんだ。


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