嵐のあと、キッチンにて .1



 ウィーズリー夫人による双子の説教タイムは、なかなかに長かった。やっとキッチンから怒鳴り声が聞こえなくなったとき、リンはとっくに本の残りのページを読み終えてしまっていた。


「………モリーさんを手伝いにいこうかな」


「あ、じゃあボクも行く」


 リンが呟くと、クルックシャンクスと一緒に捕まえた庭小人をブラブラ手からぶら下げて眺めていたスイが反応した。庭小人を雑に放って捨て、リンのところへと駆けてくる。その背後で、庭小人が地面で伸びていた。


 本を部屋へと転送したリンが立ち上がったとき、クルックシャンクスが足元を通り過ぎた。どうやらまた別の庭小人を追い回しているようだ。スイは尻尾をヒョイと振った。


「モリーはまだ機嫌が悪いと思う?」


「火山から出てきたマグマが、すぐに冷えると思う?」


「…………」


 なんとも的を射た問い返しに、スイはふいと明後日の方向を眺めやる。リンはちょっと笑った。そこでちょうど、フレッドとジョージが勝手口から出てきたところに出くわした。二人ともムスッとしている。


「大論争だったね」


「どういたしまして」


「きっとパーシーが騒音に邪魔されて怒ってるよ」


「そりゃあよかったぜ」


 リンの言葉に、二人はちょっと機嫌を取り戻したようだった。彼らのパーシーに対する態度も相変わらずだ。スイが息をつくのを聞きながら、リンはキッチンへと戻った。


 キッチンにはウィーズリー夫人しかいなかった。ウィーズリー氏はどこかへ退散したらしい。リンに気づいた夫人が、流しに入っているジャガイモを指差した。


「ああ、リン、悪いんだけど、ジャガイモがちゃんと洗えてるか見てくれないかしら」


「いいですよ」


 リンが指示通りの作業を始めて少しして、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニーの四人がやってきた。手伝いに来た様子だ。


「また庭で食べますよ。お嬢ちゃんたち、お皿を外に持っていってくれる? あの子たちがちゃんと伝達をしてくれてるなら、ビルとチャーリーがテーブルを準備してるはずだから」


 夫人がピリッと言った。フレッドとジョージのことだと、リンとスイには分かった。ハーマイオニーとジニーは、またキッチンに戻ってこずに済むよう、できるだけたくさんの皿を持って出ていった。


「そこのお二人さんは、ナイフとフォークをお願い」


 戸棚から鍋やフライパンを引っ張り出しながら、夫人はぶっきらぼうに指示した。ハリー相手にそんな口調になるとは意外だ。スイは目を丸くした。相当ご機嫌ななめらしい。


→ (2)


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