「ベロベロ飴」騒動 .4



「こういうことが、マグルと魔法使いの関係を著しく損なうのだ! 父さんが半生かけて、マグルの不当な扱いに反対する運動をしてきたというのに ――― よりによって我が息子たちが!」


「俺たち、あいつがマグルだからアレをやったわけじゃない!」


「あいつが虐めっ子のワルだからやったんだ!」


「それとこれとは違う!」


 フレッドとジョージが憤慨したが、ウィーズリー氏は一蹴した。ふとリンはキッチンの入口の方に意識を向け、肩を竦める。スイは首を傾げて振り向き、そして合掌した。


「母さんに言ったらどうなるか ――― 」


「あら、私に何をおっしゃりたいの?」


 男性陣が一斉にギクリとするのは、なかなか見物だと、スイは思った。リンは我関せずと読書を続けている。キッチンに入ってきたウィーズリー夫人は、ハリーを見つけると愛想よく笑いかけたが、それからすぐに夫を見た。


「アーサー、何事なの? 聞かせてちょうだいな」


「あ……いや……」


 ウィーズリー氏はしどろもどろになった。妻に話すつもりはなかったのだろう。オロオロと夫人を見つめるウィーズリー氏を中心に、沈黙が漂い始める。いつの間にかビルとチャーリーの姿が溶けるように消えていたので、スイは驚いた。


「モリー、大したことじゃない……フレッドとジョージが、ちょっと ――― だが、もう言って聞かせたから」


「あら、今度は何をしでかしたの? まさかウィーズリー・ウィザード・ウィーズじゃないでしょうね?」


 不穏な空気にソワソワとしているロンを視界の隅に映したリンは、溜め息をついて助け舟を出した。


「……ハリー、ロンと一緒に、寝室までトランクを運んだら?」


「そうだね、そうしよう!」


 分かりやすい奴だ。いそいそとハリーとトランクを持つロンを見て、スイは口元を引き攣らせた。ジョージが自分たちも行くと申し出たが、ウィーズリー夫人に凄まれ、逃走を諦めた。


 ハリーとロンがキッチンを抜け出たあとも、夫人はウィーズリー氏を問い詰めていく。しばらくそれを見たあと、スイはちょいと尻尾でリンの腕をつついた。さすがにここで巻き添えは食らいたくない。三度つつかれて、リンはスイを一瞥し、本を閉じて立ち上がった。


 双子が縋るようにリンへと視線を向けてきたが、リンは気づかない振りをして、スイを肩からぶら下げたまま、勝手口から裏庭に出た。


「……あと五分もしたら、モリーの怒鳴り声が家中に響き渡るんだろな」


 物憂げな溜め息をつくスイに、リンはちょっと悩んだあと「三分かもね」と返した。



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