招待状 .2



 リビングルームに行くと、珍しくリーマスとシリウスが揃っていた。今日は何も用事がなかったらしい。なにやら話し込んでいる様子の彼らは、リンが近寄っていくと、顔を上げた。リーマスが微笑んだ。


「ロンから手紙が来たかい?」


「誰に教えてもらったの? 叔父上 ――― アキヒトさん?」


 リンが聞き返すと、リーマスとシリウスは驚いたようだった。リンはシリウスが持っている羊皮紙を指差した。


「それ、叔父上からでしょう?」


「どうしてそう思う?」


「ロンが、叔父上に許可をもらったって。そうなると、叔父上が事情を知らせる手紙を送ってくるはずだから」


「見事な推理だ」


 シリウスはニヤッと笑った。リンも微笑み返して、エロールをテーブルの上に降ろし、持っていた手紙を、手前にいるリーマスに差し出す。


「ウィーズリー夫人から、二人宛てに来たよ」


 リーマスが受け取り、開封した。広げられた羊皮紙を、男二人が覗き込む。


 あんなに寄り添ってて暑くないのかな……なんて思いながら、リンは濡れタオルを用意し、エロールの身体を簡単に清め始めた。水を張った桶で洗わないのは仕様だ。水を飲んだり沈んだり溺れたりしたら怖い。


 一通り綺麗になると、エロールはホォと鳴いた。水を飲んだし休んだし綺麗になったし、さっきより少しは元気になったようだ。安心したリンが、棚からクッキーを出して彼に差し出したとき、リーマスが振り返った。


「どうかな、リン」


「うん、大丈夫。だいぶ元気になったよ」


「そっちじゃなくてね」


 エロールを撫でているリンに、リーマスが冷静に返した。リンは二人の方に顔を向けて瞬く。なにが? という顔をしているリンに、シリウスが溜め息をついた。


「ワールドカップを観に行きたいかって聞いてるんだ」


「行ってもいいの?」


 リンの返答に、シリウスが片眉を上げた。そのまま黙り込む彼の横で、リーマスがクスクスと笑う。


「どうするんだい、シリウス。あんなことを言われたよ」


「うるさいな。おまえはどうなんだ」


「私かい? 無論、リンの意思を尊重するよ」


 穏やかな笑みを浮かべるリーマスに、シリウスはまた口を閉じた。リンに視線を向けると、彼女はエロールのためにクッキーを割ってやっていた(あまりのマイペースぶりに脱力しかけた)。


→ (3)


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