彼女と始まった夏(1)





――― 親愛なるヨシノ殿

 この度ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます





 そんな手紙が届き、受け取った由乃 凛(リン・ヨシノ)は呆然としていた。


「……本当にきた……」


「まあ、当然だねぇ」


 小さな呟きに相槌が返ってきた。凛は手紙から視線を外して声がした方へ顔を向ける。


 凛から少し離れたところ、畳に置かれた座布団の上に、小さな猿が座っていた。まるで人間のように、面白そうと言わんばかりの表情を浮かべている。


「一族みんな受け取ったんだから、普通に考えて、凛にもくると思うけど」


「……できれば、もらいたくなかったな……」


「それはたぶん無理かなぁ……ていうか、そこは喜べよ」


 世の中には、その手紙が欲しくてたまらない人もいるんだからさ。そう続ける猿に、凛は「……ふぅん」と気のない相槌を打つ。猿が喋ったというのに全く動じていない。家族と話しているような雰囲気だ。


「……その人たちにあげるってことはできないの?」


「君ねぇ……、はあ、もういいや」


「? ……変なスイ」


 呆れた風に溜め息をつき、渋い顔をするスイを、不思議そうに見つめて、凛は手紙を机の上に置いた。そんな凛をちらっと見たあと、スイは窓越しに空を見上げた。


→ (2)


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