背負い込み、抱え込み (2) 「お疲れ様です、リン」 ジャスティンが椅子から立ち上がって、リンに声をかけた。 「なにか、飲み物とか、いりますか?」 「ありがとう。でもいいよ、特になにもいらない」 丁寧に断られて、ジャスティンは残念そうな顔をして、リンの肩に腹這いで乗って優しく撫でられているスイを、羨ましそうに見た。スイは優越感を漂わせながら、ユラユラと尻尾を揺らす。 「宿題はどう? 終わりそう?」 スーザンが聞いた。リンは少し考え込んだあと苦笑した。 「なんとか。あとは『呪文学』と『天文学』と『闇の魔術に対する防衛術』の残りを明日の朝に片づければいいかな」 二秒ほどの沈黙のあと、「無理しないでね」「私たちにも手伝えることがあったら言ってちょうだいね」「ああ、遠慮なく言ってくれ」「身を粉にして働きます!」「そこまでしなくていいわよアホ」などと騒がしくなる友人たちを見つめて、リンはきょとんとしたあと、はにかんだ。 ** 人より多くの量の宿題と、バックビークの弁護のための資料探し。それともう一つ、リンには、やらなければいけない、ほかの人には秘密の仕事がある。 「 ――― ルーピン先生、今日の分の薬です」 「ああ、ありがとう、リン。そこの机に置いてくれるかい?」 指定された場所に薬を置いて、リンはルーピンを見た。なにやら仕事が忙しそうだ。ここは、すぐに退室した方がいいだろう。スイもハンナたちと寮で待っているし。踵を返しかけたリンを、ルーピンが呼び止めた。 「よかったら、お茶でもしていかないか? 私も、ちょうど休憩するところだ……といっても、私は紅茶ではなく薬を飲まければいけないようだが」 「……そうじゃないと困ります」 口を「へ」の字にするリンに笑って、ルーピンはヤカンを用意し、マグカップを取り出した。リンとお茶をすることは、もう彼の中で確定事項らしい。こういう流れになったらどうしようもないと学んでいるリンは、諦めて椅子に座った。 「最近とても忙しそうだったが、体調は大丈夫かい?」 薬の熱さに苦戦しながらルーピンが聞いた。紅茶を一口飲んだリンは頷いた。 「いまのところは問題ないです。それに、この間クィディッチが終わりましたから、これからはもう少し余裕が出ると思います」 「ああ、そうだったね……対スリザリン戦、見事だった」 「………あ、りがとうございます」 ぎこちなく、リンは礼を述べた。 → (3) |