ホグワーツでのクリスマス(2)



 寮に帰って、リンはようやくプレゼントの山を開け始めた。


 ハンナからの蛙チョコレート、スーザンの大鍋ケーキ、ベティはバーティー・ボッツの百味ビーンズを送ってきた。砂糖羽根ペンを見て、アーニーらしいと笑みがこぼれた。ジャスティンのプレゼントは、かぼちゃパイだった。リンが好きだと言ったのを覚えていたようだ。


「ハロウィーンみたい」


 ベッドの上に広がるお菓子を見て、スイが呟く。


「当分お菓子には困りそうにないね」


 リンは無造作に言って、他のプレゼントを開封しながら百味ビーンズを一粒適当に取って口の中に放り込む。アップル味だった。リンはちょっとだけつまらなく思った。


「うえ、レバーだ」


 じっくり時間をかけて、慎重に、選びに選んだ一粒を頬張ったスイが、顔を顰める。


「適当に頬張ったリンが当たりで、真剣に悩んだボクが外れだなんて……世の中って理不尽だ!」


「そんな大袈裟な……」


「いいや、これは由々しき事態だよ!」


 躍起になるスイに、リンはまた笑った。



 せっせと開封作業をこなし、プレゼントを整理し終えたころ、ちょうど昼食の時間になった。リンとスイは、また大広間に行き、騒がしいクリスマスを楽しんだ。お腹がいっぱいになって寮に戻ったあとは、談話室でのんびりと時間を過ごした。



 三時頃、読書をしていたリンは、本をちょうど読み終えたところで一息ついた。ぐっと体を伸ばせば、小さく骨が鳴る。だいぶ長い間集中していたようだ。


 ふと向かいの肘掛け椅子を見ると、そこでスイが昼寝をしていた。満腹感と、暖炉の前という暖かい空間が、彼女を眠りに誘ったのだろうか。


 リンは小さく笑ったあと、これからどうしようか考えた。もう三冊も読み終えてしまったから、図書館へ返却しに行って、また新しく借りてこようか? しかし休暇中は本の貸し出しは禁止されていた気がする。


「……図書館の中で読むのは大丈夫かな」


 そう結論付けて、リンは椅子から立ち上がる。スイを起こすべきか悩んだが、気持ち良さそうに寝ているので、そっとしておくことにした。


 なるべく音を立てないように気をつけて、リンは静かに寮を出た。


→ (3)


[*back] | [go#]