恐怖の試合 (7)



 沈黙が流れた。風がガタガタと窓を打つ音だけが医務室に響く。ジンは深く息を吸い込んで、リンを見つめた。透けそうなくらい白い肌をしているリンは、まだ目を覚ます素振りを見せない。


 ジンは、リンのベッドの傍にある椅子に崩れるように座った。背中を丸めて項垂れ、両手で顔を覆う。セドリックが心配そうな表情を浮かべた。



「……ジン? 大丈夫かい?」



 返事はなかった。ジンはひたすらに顔を両手に埋めていた。みんながなにも言わず辛抱強く待ち続け、二、三分が経った頃、ようやく彼の口から囁きが漏れた。



「俺は、罪を犯した」


「え……?」


「俺は罪を犯したんだ」



 セドリックが聞き返すと、ジンは小さく、しかししっかりと言った。指の間から見える彼の目は空虚で、ここではないどこか遠くを見ているようだった。



「俺は ――― 」



 一度言葉を切り、ジンは眠っているリンを見た。ひどく怯えている表情だった。ハリーは彼をじっと見つめる。ジンがこんな表情をするのを、ハリーは見たことがない。ハリーの知っているジン・ヨシノは、いつもしゃんとして、まっすぐ前を見ているのだ。


 みんな(スイも含め)同じ思いのようで、穴の開くほどジンを注視している。特にセドリックとエドガーには衝撃が強かったらしく、呆然としていた。


 静寂の中、ジンはついに言う決心をしたようだった。一番深く息を吸う。



「俺は、小さい頃……リンを殺しかけた」



 みんなが一斉に息を呑んだ。エドガーが「……冗談きついぞ」と、まったく笑えていない顔で呟く。

 ジンは、きつく目を閉じて首を振り、震える声で、途切れ途切れに語り始めた。





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 この雰囲気しばらく続きます

 シリアスってむずかしい
 重い



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