恐怖の試合 (6)



「……何事かしら」



 ハーマイオニーが囁いた。ロンが「さあ」と肩を竦める。ハリーたちが見ている前で、ジンはベッドの横に立ってリンを見つめ、やがてリンへと手を伸ばして、彼女の頬に触れた。


 ハンナたちが帰るときにカーテンを開けていってくれたので、ハリーにもリンの顔が見えた。


 ベッドに横たわるリンは、もう濡れてはいなかったが、青白い顔で、いくつか傷があった。しかしそれでも綺麗だと思えた。むしろ綺麗すぎて消えそうだとハリーは思った。



「…………」



 ジンは深く溜め息をつき、そのあとエドガーとセドリックを睨み付けた。セドリックは息を詰めたが、エドガーは肩を竦めただけだった。ジンはそのエドガーの反応が気に食わなかったらしい。綺麗に整った白い歯を食い縛った。



「……よくも、この最悪な天気にリンを飛ばせたな」


「んなこと言ったって、仕方ねぇだろ。クィディッチは、雨だろうが風だろうが雷だろうが中止にはならねぇんだから。おまえだってよく分かってるだろ」


「雨や風だったらいい! 雷が問題なんだ! おまえら、二度と雷が鳴っているときにリンを飛ばせるなよ! 俺やリンにとって、雷は恐ろしいものでしかないんだから!」


「どうして?」



 ハリーが思わず聞いた。ハーマイオニーがハリーの手に触れたと同時に、ジンが勢いよく振り返った。


 彼の黒い目とハリーの目が合う。目を見開いてハリーを見ているジンは、大きく肩で息をしていた。ぎゅっと唇を引き結び、ただハリーを見つめる。ハリーも負けじと見つめ返した。



「なにがあったの?」


「……君には関係ない」


「僕はリンの、友達だ!」


「おお、感動的だな」



 エドガーが感嘆の声を上げた。ジンが振り向いて睨む。エドガーはニヤリと笑った。



「ついでに言っとくけど、俺らはリンのチームメイトだぜ?」


「なぜリンが雷を恐ろしく思うのか、それが分からなければ、対策のしようがないよ」



 とどめとばかりにセドリックがもっともな理由をつける。さらに、スイが尻尾でビシッ、バシッとジンの腕を叩いた。


→ (7)


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