お茶の葉 (6)



「こんにちは、ロン。元気?」


「聞いたぞ! 『占い学』で、」


「いままさにそれを話してたんですよ、ウィーズリー。何度も話を戻さないでくれませんか。リンが迷惑します。あと、リンに挨拶を返しなさい。失礼です」



 冷ややかな声で、ジャスティンが言った。その場だけ温度が五、六度は下がっただろうと、ハリーは思った。ロンは驚いたようにジャスティンを見て、小さく謝罪した。



「謝らなくていいわよ、ウィーズリー。リンは全然気にしてないし……強いて言うなら、ジャスティンが苛立ってるだけよ」



 ジャスティンを横目で見ながらベティが言った。アーニーとスーザンが顔を青くし、ハンナがリンの影に隠れた。グリフィンドール生は、頭の中を疑問符で埋める。勘のいいハリー、ハーマイオニー、ディーンは数歩下がった。ジャスティンがゆっくりとベティに向き直り、二人は見つめ(睨み)合った。



「……ベティ、ジャス、言い争いはやめなよ」



 疲れると言わんばかりに、リンが溜め息をついた。パッと二人がリンを見る。二人が口を開く前に、リンが先手を打った。



「ベティ、むやみやたらとジャスを挑発するな。ジャス、君はなにをそんなに苛立ってるんだ? 話の最初の方から妙に落ち着きがないけど……」



 アーニーたちが身体の力を抜いた。(一応)口論は未然に防がれた。鶴の一声となったリンのセリフに、ベティはフンと鼻を鳴らし、ジャスティンはぎゅっと唇を引き結んで、深く息を吸い込んだ。彼の身体が膨らんで見えるのは、空気を大量に吸い込んだためだけではないだろうと、ハリーは思った。



「だって、事もあろうに、リンに死神犬だなんて……無礼にも程があるのでは? 僕、許せません」


「まったくだ! 僕だって、リンが死ぬなんて冗談じゃないぞ! トレローニーの奴、リンに死の予告をするなんて、いい加減どころか悪ふざけもいいとこだ!」



 憤慨したシェーマスがジャスティンに同意した。いつの間にリンを崇拝し出したんだと仰天するハリーたちに、ディーンとアーニーが肩を竦めてみせた。ハーマイオニーはハンナとスーザンに質問をして、ベティに「あとで」とあしらわれた。



「……あのさ、君たちは動揺しすぎなんだよ。たかが茶葉の模様でしょう」



 呆れた風にリンが言った。ハーマイオニーが表情を明るくする。



「ああ、リン! そうよね! あれ、当てずっぽうが多すぎるわよね!」


「そこまでハッキリとは否定しきれないけど」



 落ち着き払ったリンの言葉に、ハーマイオニーが沈む。今度はハリーが言った。



「リンは、えーと、あの先生の言ったこと、信じてる?」


「当たるも八卦、当たらぬも八卦、ってとこかな」



 君はどうなの? と尋ね返すリンに、ハリーは首を振る。リンが笑った。



「私も正直、ああ言われたとき『だからなに?』って思ったよ。だって仕方ないでしょう? 私、昔から動物に好かれやすいんだから」



 みんなが思わず笑った。ハーマイオニーも微笑んだ。ただし、ネビルとロンだけは笑わなかった。



→ (7)


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