意外な反応 (2)



 飽きもせずにマルフォイが何度目かの気絶する真似(あれがハリーを示唆しているとするなら、まったく演技の才能がないと思うが)をして、笑い声が上がったとき、ふとマルフォイとリンの目が合った。


 スイがマルフォイに見えるように大振りに尻尾を振ると、彼は一瞬で耳まで赤くして、そのまま無言でトーストを食べ始めた。



「フン」



 スイが大きく鼻を鳴らした。スリザリン生は、なぜか突然パントマイムをやめて朝食を取ることに集中し始めたマルフォイに、首を傾げている。



「可愛くない奴だよ、まったく」


「……珍しいね、声に出して言うなんて」



 口元に手を当てて小さく欠伸をしながら、リンが言った。スイはヒュンヒュンと尻尾を振る。勢いがよすぎて、時折リンの背中にバシンと当たって地味に痛かったが、リンは何も言わなかった。



「だって腹立たしいじゃないか! それに、あいつ今日、」


「静かに」



 リンが囁いた。スリザリン生が一人、席を立って足早にリンの方へやってくるのに気がついたのだ。スイは素早く口を閉じて、リンの右肩から左肩へと移動する。その間に、スリザリン生はリンの前に到着した。



「……おはよう」


「おはよう」



 素っ気なく呟いた相手とは対照的に、リンは朗らかに挨拶を返した。スイは、じっと男子生徒を見つめた。


 スリザリンの男子生徒は、ガッシリしている体育会系か、ヒョロリとした理系タイプのどちらかだ(とスイは勝手に思っている)。目の前の彼は、明らかに後者だ。細身で、十三、四歳にしては背が高く、かなり賢そうな顔立ちをしている。落ち着いた雰囲気で、わりとイケメンだ。


 それにしても、この顔にはすごく見覚えがある。スイが首を傾げたとき、彼が、後ろに隠すようにしていた腕を動かし ――― パパパァンッ! と音が鳴った。



「……あのさ、ジャス。武装解除してくれなくていいから」



 スリザリン生に向けて無表情で杖を構えている友人に溜め息をついて、リンが言った。透明な膜のようなものが、リンとスリザリン生の周りを囲っている。どうやら、ジャスティンからの攻撃を防いだらしい。


 スイはシパシパと瞬いて、ふと、正面のスリザリン生が持っているものを見た。



「ハリー、フレッドとジョージもね」



 ジャスティンと同じく杖を構えてスリザリン生を睨んでいる三人に注意して、リンはもう一度溜め息をついた。



「自分の身くらい自分で守れるし。だいたい……ノットは武器なんて持ってないよ」



 確かにそうだった。スイの視線の先では、綺麗に包装された箱がノットの手に握り締められていた。見るからに「贈り物」だ。


 ノットというスリザリン生に敵意を剥き出しにする男子生徒数人を適当に宥めるリンの肩の上で、スイはノットを見つめる。

 複数人に攻撃されて、気が立ったり敵意を抱いたりしたかと思えば、そうでもないようで、ハリーたちを睨んではいるものの、杖を出すことはない。あくまでも理性的だ。


 スリザリン生にしては珍しいタイプだと感心したスイが尻尾を振ったとき、ようやくリンがノットに向き直った。



→ (3)


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