ドレッドヘアに挟まれる .3



「言われてみれば、そうかもね」


「そうでしょう? それに、現時点の彼のレポート、なかなかに惨憺たるものですし」



 最初に声をかけられた際に覗き見たのだが、ひどかった。タマオシコガネをタマムシと書いたり、根生姜を刻む工程を菖蒲の根を千切るとしたり、とにかく散々だ。あんなレポートを受け取ったスネイプが何をするか、考えただけでも恐ろしい。



「リーって、ホント魔法薬学がダメなんだから……」


「薬学は繊細な分野ですからね」



 たとえ材料や手順が合っていたとしても、一滴、一ミリ、一秒の差異で、結果が異なってしまうのだ。並外れた集中力と正確さが求められる。


 そうすると、彼が魔法薬学を得意とすることは一生起こり得ないのかもしれない……。そんなことを考えながら、リンは、他の資料を手に取り、目当てのページを開いて、机の上に並べていく。

 テキパキしたリンの動作に、アンジェリーナが不思議そうな顔をした。



「リン、やけにページを開けるのが早いね?」


「ここの本は、一通り読みましたからね」



 アンジェリーナが目を丸くする。それを気に留めず、リンは、必要なすべての資料を揃えた。使わない本は机の端に積んでおく。ふうと一息ついて、リンは時計を見た。



「じゃあ、先輩方、私そろそろ帰りますね」


「ああ! ホントにありがとな!」



 ニカッと笑うリーに「お役に立てて何よりです」と社交辞令を返して、リンは図書館をあとにした。その後ろ姿を見送って、アンジェリーナが呟く。



「……あの子、どうしてレイブンクロー生じゃないのかな」


「それ言ったら、ハーマイオニーだってそうだろ?」



 そういえばそうだった。リーの指摘で思い出したアンジェリーナは、ふと身体の力を抜き、眉を下げて笑った。



「末恐ろしい後輩たちだなぁ」


「まったくな」



 深く同意して、リーはレポートの作成に取りかかる。その横に立ったまま、アンジェリーナは彼のレポートを覗き込み、軽く添削をするのだった。






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 時間軸は、イースター休暇ちょっと前くらいをイメージしてます。
 なぜアンジェリーナとリーだったかというと、原作で、リーが頻繁に「アンジェリーナは魅力的」発言をするので、つい。意外と楽しかったです。
 ドレッドヘア同士、アフリカ系同士で、仲良いかなーと思います。恋愛感情は、お互い持ってない。という勝手な思い込み。
 最後の「末恐ろしい後輩たちだなぁ」が言わせられたので、満足です。



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