ドレッドヘアに挟まれる .2



「お二人は、仲が良いんですか?」


「いや?」



 なんとなく気になって質問すると、アンジェリーナはあっさり否定した。「そこそこな」と言おうとしたリーが、何やらわめき出したが、再びアンジェリーナに髪を鷲掴まれる。それを見て、いったいどういう力関係なのだろうかと、リンは疑問を感じた。



「まったく、さっさと集中して終わらせなさいよ」


「それができたら苦労しないよ」



 やれやれと首を振るリーに、リンは小さく笑う。リーは素早くリンに視線を向け、ウインクしてきた。その頭を、アンジェリーナが本で叩いた。



「後輩にちょっかい出すなっての」


「アンジェリーナ、嫉妬してくれてるのかい?」


「寝言は寝てから言いなよ」


「いたい!」



 本の角を振り下ろされ、リーが悲鳴を上げる。それを見て、リンが口を開いた。



「やめてください、ジョンソン。本を雑に扱うと、マダム・ピンスが怒って飛んできます」


「ちょ、リン、俺の心配は?」


「あなたはそこまで柔〔やわ〕じゃないでしょう?」



 涙目のリーが弱々しく言ったが、リンは、小さく首を傾げて受け流した。今度はアンジェリーナがクスクス笑う。リーは、両手を挙げて降参のポーズを取った。



「なあ、ホント頼むよ。どっちか一人でもいいから」


「ダメだって、何度も言わせるなよ」


「……たったいまジョンソンの武器になった本の、七十九ページを開いてください」



 溜め息混じりのリンの言葉に、二人は一瞬きょとんとした。だが、リーの方は、すぐにパッと表情を明るくした。



「リン! 君、マジで救世主だぜ!」


「黙って十六行目から先を読んでください」



 指示に従うリーと入れ替わりに、アンジェリーナが口を開いた。



「リン、それじゃリーのためにならない」


「答えが載っている場所を漠然と教えてるだけです。この方がきっといいですよ。ここで私たちが放置しても、彼は誰か、答えを教えてくれる人の助けを借りるんですから」



 与えられた答えを書くだけよりは、自分で答えを探して書く方がいい。そう述べるリンに、アンジェリーナは、不意を食らった顔で口を閉じた。じっくり本を読むリーを一瞥して、肩を竦める。



→ (3)


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