眼光の呪い .3



「や、やあ、こんにちは、ニック……」


「ご機嫌よう。……それより、ずいぶんと顔色が悪いようですが」


「さ、さむくて」


「それはいけない。もう数枚の衣服を着用して、温かい飲み物でも、」


「それらがいまこの場にあるとお思いですか?!」


「ありませんよね、すみません! ええと、では、『保温呪文』を使用なさってください」


「まだ習ってないのに、どうやって使えと?!」


「お教えしますから!」



 双方とも慌てふためく必死なやり取りを交わした後、ジャスティンとスイは、なんとか持ち直した。じんわりとした暖かさに、ほっと息をつく。



「ありがとうございます、ニック。助かりました」


「いえいえ。それより、どのようなご用件でこちらに?」


「図書館に行くんです」


「……図書館は、ここより一つ下の階にありますが」


「…………」



 どうやら、慌てたせいで、階を間違えたらしい。

 あああ……と溜め息をつくジャスティンの腕を、スイが尻尾でつつく。慰めてくれているんだろうか。ジャスティンは、力なく微笑みかけた。そこで、「ほとんど首無しニック」が口を開く。



「お望みでしたら、ご一緒しますよ」


「本当ですか、」



 ニック、という言葉は、喉の奥で消えた。透き通る身体の向こう側にある“黄色”を見た瞬間、ジャスティンの意識は暗転した。






****

 (原作)ジャスティン、なぜ一人で廊下を歩いていたんだ。そして、なぜニックと一緒だったんだ。そんな疑問を、常々抱いておりました。

 「世界は結ばれる」のジャスティンは、心細さのあまり、リンのもとへと行く、という感じにしました。じゃあなんで離れたんだよ、最初から傍にはべってろよ、というツッコミはなしの方向で。あえて言うなら、アーニーが「隠れてろ」と言ったからですね。


 ちなみに、スイは、ジャスティンが石になった直後に、思わず振り返って石化してしまいました。ニックも同様です。

 あと、スイが談話室にいたのは、ジャスティンを守ろうとしたからです。結局、守れなかったのですが。挙句、巻き添えを食らうという残念な感じに終わる。



→ ドレッドヘアに挟まれる
 (図書館での話)



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