見つけた有望株 .1



 セドリック・ディゴリーは、瞬きをした。理由は、目の前にいる親友の様子にあった。

 フンフンと、楽しげな鼻歌混じりに、小さく身体を揺らしている、エドガー・ウォルターズ。ずいぶんと機嫌の良さそうな彼に、セドリックは首を傾げた。何かあったんだろうか?


 親友の傍にいた、クィディッチ・チームのメンバーに、それとなく尋ねてみると、「ヨシノと話してから、ずっとこんな調子だ」という答えを得た。セドリックは、パチリと瞬く。



「言っとくけど、セド、ジンの方じゃないぞ」


「……エド、君って、いつも唐突に話に入ってくるね」


「予測してもらえる会話への参入なんて、あるのか?」



 エドガーの切り返しに、セドリックは納得した。確かに、彼の言う通りだ。会話への参加は、概して唐突に感じられるものだし、そもそも、会話そのものが、たいてい唐突に起こるものである。



「おーい、セド、話を元に戻していいか?」


「ああ、うん。戻してくれ」



 思考していると、エドガーが声をかけてきた。それを機に、セドリックは思考を切り上げる。


 こうして、つい思考にふけって無言になってしまい、会話に置いていかれることも少なくない。そんな自分に、さりげなく配慮してくれるエドガーは、とてもいい人間だと、セドリックは思っている。



「さっき、セドが図書館に行ってる間に、リン・ヨシノに会ったんだ」


「……そうなのか」



 そういえば、彼女は図書館にいなかったな。相槌を打って、セドリックは思った。ハンナ・アボットやアーニー・マクミランなど、リンの友人たちは見かけた。しかし中心人物はどこにいるのかと思っていたが、なるほど、別行動を取っていたらしい。



「……彼女と何を話したんだい?」


「いがぐり頭だって言われた」



 一瞬、セドリックは笑い出しそうになった。だが、友情の手前、抑える。エドガーが「笑いたいなら笑えばいいのに、セドはまじめだなぁ」と、おかしそうに笑った。



「しっかし、なかなかユーモアのセンスがある子だったぜ。身のこなしもよかったし」


「身のこなしって……君、何をしたんだい?」


「俺は何もしてない。リンのお友達ちゃんが、いきなりリンに殴りかかったんだ」



 ……いったい、どういう状況だったのか。気になったが、なんとも言えず、セドリックは先を促すことにした。



「それで、君はリンと友達になったんだね?」


「さすがセド。よくお分かりで」



 ニヤッと笑うエドガーに、セドリックは苦笑した。初対面の人間とすぐに打ち解けるのは、エドガーの得意技だ。おかげで、彼の交友範囲は広い。スリザリン以外には、どの寮にも必ず友人がいるのだ。羨ましい限りである。



→ (2)


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