組分け帽子(3)



「そのヨシノっていう家系は、みんなホグワーツに来てるの?」


 ハリーは一度視線を外して、また質問した。パーシーは曖昧に頷いた。


「まぁね……全員がそうかは分からないけど、いくつか記録が残ってる……主席名簿とか、賞状、トロフィーなんかに」


「他にヨシノの人は、今ここにはいないの?」


「いるよ」


 パーシーは、ようやくリンから視線を外した。身体の向きを変えて、レイブンクローのテーブルを指差す。


「あそこに、黒髪の男子生徒が座っているだろう?」


 ハリーも身体ごと振り返って見た。


 とても整った容姿の男子生徒が、頬杖をついて、どうでもよさそうな雰囲気を醸し出している。しかし、目はしっかりとリンを見ていた。


「ジン・ヨシノ。僕の二つ下の学年……フレッドとジョージと同い年だ。とても優秀な生徒でね、確実に監督生になるだろうと言われてる」


 パーシーはどこか興奮した様子で熱を込めて囁いた。


「すごいね」


 ハリーはそれだけ言って、彼女に視線を戻した。帽子はまだ迷っているようだった。生徒の囁きが大きくなる。先生方も興味津々なようだった。


 どの寮に組分けされるのだろう? なんとなく、スリザリンには入ってほしくないな、とハリーは思った。


 目を凝らして見ていると、組分け帽子がピクリと動いた。


「 ――― ハッフルパフ!


 帽子の言葉に一瞬沈黙が流れた。


 しかし、リンが椅子から降りると、左側のテーブルから歓声と拍手が上がり、反対に他のテーブルからは落胆の溜め息が聞こえてきた。


 スリザリンはとても悔しそうだったし、グリフィンドールでも何人か ――― 例えば、双子のウィーズリーとか ――― が不満そうな声を出していた。


 パーシーも、呆然としたあと「予想外だ」と頭を振った。


そんなまさか! レイブンクローか、でなければ我がグリフィンドールだと思ってた……ヨシノがハッフルパフだなんて、前代未聞だぞ」


「そうなの?」


 ハリーが尋ねると、パーシーは不満顔で頷いた。


「ほとんどがレイブンクローだ……たまにグリフィンドール生が出るけど……スリザリンも三人だけいた……だけどハッフルパフは、僕の知る限り、今まで一人もいやしない!」


「それなら、パース、あの子がハッフルパフに行く可能性は、君の中ではまったく完全になかっただろうな」


「まったくだ。君が気づいた限りだが、そんな前例はなかっただろうからな」


 双子が真面目くさって言うと、パーシーは顔を真っ赤にして「黙れ!」と噛みついた。


 ハリーは、三人を無視して、ハッフルパフのテーブルを見た。


 リンを目で探すと、彼女は疲れたように微笑みながら、周りのハッフルパフ生と握手をしていた。 


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