世界が変わった一番の出会い(後日、本人談).1



 ――― バチャンッ! 


 突然、頭に訪れた衝撃に、ジャスティン・フィンチ-フレッチリーの頭の中は、真っ白になってしまった。


「うわっ!」


「………え?」


 隣を歩いていたアーニー・マクミランが悲鳴を上げる。視線を向けて、ジャスティンは唖然とした。友人の頭が、泥まみれになっている。


 屋内で、何故、突然。どこから、何が、誰が。


 断片的な単語だけが頭の中を巡る。まともな思考ができない。混乱しているジャスティンに、再び衝撃が来た。


「っ、え、あ……な、なに?」


「ジャスティン、ピーブズだ!」


 アーニーが腕で頭を覆いながら叫んだ。その言葉を聞いて、ジャスティンはほとんど条件反射で上を見上げた ――― それが間違いだと気づかずに。


「ウィィィイイイ!!!」


 狂ったような笑い声が耳に入るのと同時くらいに、バッチャンッ!! と音を立てて、顔に何かがぶつかってきた。ジャスティンは思わず目を瞑ったが、それでも状況は悲惨だった。


 何か、ねっとりというか、べっとりしたものが、顔面についている。それが口にまで垂れてきて、ジャスティンの身体に嫌悪感が走った。何の味か、なんて、知りたくもない。


 ジャスティンは勢いよくそれを吐き出し、ローブの袖で顔を拭った。


「う……えっ、泥、舐めちゃったっ」


 ゲホゲホとむせ込むジャスティンの頭上で、ポルターガイストはケタケタ笑った。手に持った泥団子をお手玉にして遊んでいる。


「ボタボタ泥んこ! はっはのはーだ!」


 意地の悪い顔で、ピーブズは泥団子を持った手を後ろに引き、ジャスティンとアーニーに投げつける態勢を取った。


 来る! そう思ったジャスティンたちが目を瞑ったときだ。


「 ――― 邪魔」


「ぶふぉっ?!!」


 ジャスティンたちの背後から、淡々とした声が聞こえた。そしてピーブズが、まるで何かを顔面に投げつけられたかのような、くぐもった悲鳴を上げる。


 不思議に思って、ジャスティンはそっと目を開けた。


→ (2)


[*back] | [go#]