新学期が始まる一日前に、帰省していた生徒たちは帰ってきた。

 出迎えたリンは、ハンナに飛びつかれ、スーザンにハグをもらい、ベティからタックルを受ける羽目になり、その後アーニーには苦笑交じりに気遣いの言葉をもらった。ジャスティンはリンの前に来て、頬を紅潮させて微笑んだ。

「リン、お久しぶりです。クリスマスプレゼントをありがとうございました。大切に、一口一口味わっていただきました」

「……うん、できればもっと気軽に食べてほしかったな。プレゼント用に大量生産したクッキーだったから」

 送ったクッキーは、実はホグワーツの厨房で作らせてもらったものだ。スイが教えてくれた厨房への入口がハッフルパフ寮から結構近いところにあると知ったので、空いた時間に行ってみたのだ。なんだかいろいろと衝撃的だった。

 そのときのことを思い出しながら、リンは、なぜか差し出されていたジャスティンの手を握る。

 ベティが笑いをこらえて苦しそうに身を捩っているのが視界の隅に映り、あとで百味ビーンズの塩味と胡椒味と唐辛子味を一度に口に突っ込んでやろうと決めた。


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 新学期が始まった。ということは、クィディッチのトーナメントが再開されるわけである。

 新学期最初の試合はハッフルパフ対グリフィンドールだったので、ハッフルパフの生徒たちは緊張と不安で一杯だ。なんていったって、グリフィンドールのシーカーは、あのハリー・ポッターだ。彼の初試合での活躍は、みんな今でも覚えている。

「ううう……絶対、負けてほしくないわ……」

「……君がそんなことを言ったって、仕方ないでしょう」

 ベッドの上で枕に口元をうずめて唸るハンナに、リンは溜め息をついた。

 待ち望んだ試合はいよいよ明日だ。応援のために作った旗が、ハンナのベッドの横の机に置かれている。早く寝ろとリンが言っているのに、彼女はまだゴロゴロと転がって唸り声を上げていた。

「むうう……リンは、明日の試合見に行かないの?」

「……スイの体調次第かな」

 リンは、毛布にくるまって眠っているスイへと視線を向けた。

 フィルチに追いかけられて ――― リンは理由や経緯〔いきさつ〕を一切知らないが ――― 雪の中に突っ込んで以来、彼女は熱を出していた。

 もう三日になるので、明日も熱が引かないようなら、ハグリッドにでも診てもらった方がいいかもしれない。

「……とにかく、君はもう寝たら? 明日起きられなくなるよ」

 リンの忠告に、ハンナは渋々ベッドの中に潜り込んだ。

 しばらくして、ハンナが寝息を立てたのを確認し、リンはガウンを脱いだ。そろそろ自分も寝るべきだ。

 ベッドに入り、布団を肩までかけ、最後にスイへと顔を向けたあと、リンは静かに目を閉じた。

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