独り言《テニプリ:忍跡》
忍足は、みんなよりも少し遅く部活を終わり、着替えようとロッカーから制服を取り出していた。部室には忍足一人だけで、着替えている間、忍足は恋人の跡部のことを色々と考えていた。
(この頃ヤらしてくれへんなぁ。跡部は俺とヤりたくないんかなぁ)
ここ一週間程、忍足は跡部とセックスをしていなかった。その理由と言うのも、跡部が疲れているからヤらない、とずっと断っていた為だった。そんなことを一人心の中で考えていたためか、部室に跡部が入ってきていたのに気が付かなかった。忍足はそのまま、ポツリと独り言を漏らした。
【独り言】
「跡部……俺のこと嫌いになったんかなぁ……」
跡部はその言葉を聞き、目をこれでもかと言うほど見開いた。その目は、今にも泣き出しそうなくらいで、忍足は跡部がそんな表情をしているなんてつゆ知らず、また独り言を呟いた。
「別れたくあらへんわ……」
忍足は着替えが終わったのか、ジャージをカバンに詰め込み、帰ろうと荷物を持って振り向いた。跡部はヤベッと思ったが、もう遅かった。振り向いた忍足は、跡部の姿をとらえると、目を見開いて驚いた。その拍子にドサッと持っていた荷物が手からずり落ちた。それもそのはず。誰も居ないと思っていた部室に誰かいて、それも自分の恋人なのだから、驚かない奴は居ないだろう。
「……な……何で跡部が……ここに居るん……?」
精一杯、動かない体を無理矢理動かし、喉から絞り出した言葉で聞いた。
「あん?俺も残って練習してたからに決まってんだろ……」
「そ……そうやったんか……」
(今の絶対聞かれとったんやろうな……。俺と目ぇ合わそうとせぇへんもんな。俺最低やわ)
しん、と会話が途切れ、静まり返る部室。その空気は重たく、二人を包んでいた。その静けさを先に破ったのは、跡部だった。
「俺は……別れねぇからな……!!」
「……は?」
いきなりのことに、忍足は間の抜けた声を出してしまった。
「だからっさっきお前が言ってたことだ!!」
(さっき……?あぁ、俺の独り言のことやな。って別れねぇ……?跡部が!!?)
「別れんて……ホンマ?」
思わず侑士は跡部に聞いてしまった。
「俺が嘘言うと思ってんのかよ」
「思ってへんけど……跡部の口からそんなこと聞けると思ってへんかったから……」
嬉しそうに少し笑って忍足が言うと、跡部は照れたように顔を朱に染めた。
(なんや!?跡部の奴いつにもなくめっちゃ可愛いやんか!お……襲いたいんやけどなぁ……そんなことしたらきっとキレるんやろな……。しかもここ部室やし)
自分の理性を抑えようと、忍足が色々考えていると、跡部がふいっと後ろを向き、着替え始めた。
「跡部、途中まで一緒帰るやろ?」
「あん?……あぁそうだな」
バサッとカッターシャツを着る音が聞こえ、忍足が跡部の方に目線を向けると、程よく筋肉がついた跡部の体が目に入った。
(ホンマ跡部はエッロい体しとんのやなぁ)
と、忍足が跡部の体をマジマジと見ていると、跡部と目が合った。
「……何だよ」
「いや、エロい体してる思てな」
「は!?お前どういう目で俺のこと見てんだよっ」
「どういう目って……恋人の目で見とるに決まっとるやろ」
そう真顔で言って、忍足は跡部へと近づいて行く。跡部は何か危ないものを感じ取ったかのように、忍足が近づくだけ後ろに下がって行った。だが、それも壁の方へと追い詰められてしまい、逃げるどころか逆に捕まえられてしまった。跡部は壁を背にして、目の前にいる忍足を睨んだ。
「何すんだよ」
「何って……セックスやろ?どんだけヤってへんと思うとんの?ヤらせてくれてもええやろ?」
忍足は声をいつもより低くして跡部の耳元で囁いた。跡部は耳を真っ赤にさせて忍足を睨んでいたが、あまり恐くない。むしろ誘っているようにしか見えない。忍足はたまらず、まだボタンをとめていないカッターシャツから見え隠れしている胸の突起を指で押しつぶした。
「!!?……おい忍足っここ部室っ……ぅあっ」
いきなりピリッとした痛みが跡部を襲う。下を見ると、胸の突起を指で摘まれていた。
「お……忍足……ぅんっ……あ……」
くちゅ、くちゅ、と淫らな水音が聞こえてくるのは、二人の重なった唇からで、どちらのものかもわからない唾液が、二人の口の端から流れ出ていた。
「ちょっ……忍足っや……めろ」
「俺ん名前は侑士やで……景吾」
跡部は顔だけじゃなく、全身を真っ赤に染めると、観念したようにスッと忍足の眼鏡をはずした。
「邪魔なんだよ、これ」
眼鏡くらいはずしてキスしろよ。と言って跡部は忍足にキスをした。忍足は、最初その行動に驚いたが、ニタリと口端を上げて笑った。
「やっとヤる気になってくれたんか……。そう来てくれへんとおもろないで?」
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―――――――
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ずちゅっぐちゅっと、結合部分から聞こえる淫らな水音が部室に響いて、忍足と跡部の性行為をもっと厭らしく、淫らにしていた。
「あっ……ぁあ、あ……はっ…ゆっ侑士っ……もう、無…理だ。止め…はんっ」
「止めぇ言うけど、今止めたら辛いんは景吾やで?」
「ふっ……なら早……く、終わ……ら、せろ……よなっ」
忍足は、跡部を後ろから抱え込むようにして、部室に置いてある椅子に座り跡部を抱いていた。
「早よ言われてもそれは景吾の頑張りにもよるで?」
そう言いながら跡部の髪に口付けする。跡部は先刻までに数回もイったのにもかかわらず、忍足はまだ一回もイっていない。
「景吾、淫らに腰振ってせんと、俺をイカせられへんよ?……せやけど、それまで景吾の体力保てばええんやけどな」
「……ん…るっせぇ……んだよ…お前…。少しは黙っとけ……」
喉から絞り出すように、荒い息をつきながら言う跡部に対し、忍足は涼しい声で直接跡部の耳に話しかける。
「しゃーないから手伝うてやるわ」
「は?……あぁっちょっあぁん……ふぁ、はぁっ」
忍足は言い終わると同時に、跡部を下からずんっと突き上げた。しかも跡部は忍足の上に乗っかっているため、自分の重さでもっと奥まで、突かれる。その快感に絶えきれず、跡部はまたイった、が。
射精は跡部のモノを、根元の部分で強く握った忍足の手によって止められた。
「何すんだよ…っ」
後ろにいる忍足に怒鳴った。
「景吾ばっかええ気持ちなったらあかんやろ。俺も気持ちようさせてえな」
跡部のモノの根元を締め付けながら、抜き差しを繰り返す。射精出来ないことが余程辛いのか、跡部は目から涙を流して懇願した。
「侑……士……。も、イキてぇ……イカせて、くれ……」
跡部はそれを言うことが恥ずかしいのか、下を向いて肩を小刻みに震えさせていた。忍足は震えている肩にちゅっと軽いキスをし、そのまま肌を滑るように唇を項に持っていった。そこには少し強めのキスをすると、赤くキスマークがついた。
「イクんなら一緒にイクで?」
と、さっきよりも激しい抜き差しを繰り返した。跡部はその激しさに声を高く上げて鳴いている。
「……なぁ景吾……。中に出して……ええか?」
忍足のその問いに、早くイキたい跡部は無我夢中で首を縦に振った。ズクンッと跡部の中で忍足のモノが一段と大きくなると、跡部がより一層甲高く鳴いた。
「……くっ…締まりすぎやでっ……」
「ぅあ……ああぁあぁっ!」
二人は同時に達した。そんなどちらも疲れている中、忍足は跡部の頬にキスした。
「景吾、愛しとるで……」
囁くように、艶を帯びた声音で跡部に言った。しん、と部室は静まり返り、返事が無いものだと思った忍足は、自分のモノを跡部の中から抜こうと、跡部を抱え上げようとした時。
「……それはこっちの台詞なんだよ……」
ポツリと跡部が呟いた。それは、いつも素直じゃない跡部の、精一杯の愛情表現なのかもしれない。
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――――
そして帰り道。
「もうぜってぇ部分でヤラねえからな」
「!?なら他の場所ならヤってもええんか?」
「っ!ばっ馬鹿やろっ」
素直じゃない跡部だか、忍足の問いに否定しないところを見ると、少し期待しているということなのだろう。
それからというもの、部室ですることはないが、先生のいない保健室、誰もいない屋上や教室などで、二人がセックスすることが増えたとか増えてないとか。
―end―
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