てのひらに太陽を透かしてみるけど、見えるのは赤く染まる薄い手なんかじゃなくて、四角い、黒色のあざだけだった。
いつもこうして屋上で眠るのは、この四角をちょっと見て、「俺は結界師だ」と、「時音を守るんだ」と、自覚するためなのかもしれない。
もはや儀式と言っても良いようなその行為は、今この瞬間だって行われて。
「守る、ね…。」
いつも。
いつもいつも、
いつもいつもいつも。
俺は何をしてるんだろう。
時音は守られる事なんか望んでいないのに。
それでも俺は時音を守る。
決めた事は曲げない。
俺の信条だから。
高校に入ると、やっぱり修学旅行とか林間学校とかあるわけだけど、あたしはたまにしかそういうのに参加できない。
おばあちゃんに代わってもらうことも出来るけれど、なんとなく気がひけて。
これは高校だけじゃなくって、小さいころからずっと、ずぅっと変わらないことだった。
あたしだけじゃない。
良守だってそうだ。
あたしの胸には四角くて、黒いあざがある。
小さいころはこれがすごく嫌で、こんなのなければいいと思っていた。
父が死んでからは、そうではない。
誇りに思うべきあざ。
あたしの生きる道。
良守は手にあざがあるから、学校に行く時は包帯を巻いて隠している。
あたしはその、包帯を巻いた手で、こっちにひらひらと手を振ってくる良守を見て、毎回なんとなくお腹が重くなる。
良守は見えるところにあざがあって
あたしは見えないところにあざがある。
そして、あたしには、
あざが見えないかわりに、はっきりと見える、大きな傷跡がある。
あたしは良守を苦しめているだろうか。
(…いや、あの馬鹿はそこまで考えてない。きっと。
きっと。)
あたしは良守のいないところで無茶をする。
良守がいるとそれはしない。
良守にはちょっと罪悪感を感じている。
それと同時に呆れている。
精一杯仕事して、
良守が、あたしを追い越していく事に、
ちょっとだけ嫉妬しているなんて、気づかれたくないから
あたしは良守を避けて、そして見つめる。
(幼馴染なんていう綺麗な響きはもう存在しない。
だからあたしとあいつは仕事仲間で、そして。)
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