朽木姉 過去 | ナノ

縁とは唐突に


(23/23)




「うーきたけっ!」

「お見舞いに来たよー」と無遠慮に襖を開けると、顔色の悪い浮竹が額に乗せたタオルを抑えて起き上がる。事前の連絡も寄越さず不躾に訪れている私に、きちんと上体を起こして迎えてくれる辺りが彼らしいが、「いいよいいよ、寝てな」と私は彼を床に戻す。


「サボりか?雪音」

「失礼な!!ちゃぁんと仕事はこなしてきたよ」


ハハ、そうか。と笑う浮竹に、私は手土産を差し出してふぅ、と息を吐く。疲れた顔をしていたのか、ここ最近休息をとれてなかった事を簡単に見破った浮竹が「隊長業務には慣れたかい?」と相変わらず父親のように心配してくれた。そんな彼に「やっとね、」と私は笑って返す。

「正直隊長がこんなに大変だとは思わなかったよ」

「そうだろうな、そういえば猿柿副隊長の所に通ってるんだって?」


彼女のつんつんした髪と、睨みつけてくる瞳を思い浮かべて思わず笑みを零しながら「あぁ、うん」と答える。「ひよ里ね、すっごく面白いよ」と付け足すと浮竹は嬉しそうに微笑んだ。


「いい友達が出来たみたいで良かった」

「友達?かなぁ、向こうは私の事毛嫌いしてるけど」

「雪音にとっては、友達だろう?」


うん、と静かに頷くと、彼は重そうに腕をあげて私の頭を乱雑に撫でた。もう子供じゃない、と反抗しても結局彼の子供扱いが直らないことは分かりきっているので、最近は抵抗しないことにしている。


「浮竹隊長、お茶をお持ちしました」

襖の奥から女性隊士の声がした。


凛としていて、綺麗な子だった。「朽木隊長も、」と差し出されたお茶を受け取れば、薄く微笑まれる。今朝庭先で見た、名前も知らない小さな白い花によく似ていた。


彼女は都と名乗った。五席の席官で、将来は隊長格になるだろうと浮竹は言った。確かに彼女の霊圧が鍛錬を重ねて磨きあげられているのはすぐに分かるほどであったし、チラリと見た手の平は刀を振るったせいか皮が厚くなっていた。


「将来有望だなぁ、オイ」

「雪音、口調」

「将来有望デスワネ、オホホ」





 次
- ナノ -