朽木姉 | ナノ

茨は他者を刺しながら花開く


(12/12)




「っ!!!雪音!!」

浮竹に連れられてやって来たのは十三番隊隊舎で、そこで待ってくれていたのは他でもないルキアだった。失われかけた命。尸魂界に、藍染に、消されてしまってもおかしくなかった命。

たった1人の、大切な妹の命。




「ルキア…!良かった…」

思わず抱きしめて、ぎゅう、と腕の力を強くすると、ルキアは苦しそうに「ありがとう」と囁いた。

「雪音が居なければ、私は双極に、藍染に、殺されていただろう。助けてくれて、ありがとう」

そう言って0だった距離を少し開けてお辞儀するルキアに「そんな事ない」と返す。

「喜助が貴方に崩玉を隠したせいでルキアは藍染に狙われた、私たちが貴方を危険に晒したの」

「ごめんなさい、ルキアにお礼を言われるような事、私してないんだよ」

崩玉を死神の魂魄に隠したと喜助は言った。私も喜助もそうすることでその死神がどうなるのか分かっていたのだ。即ち、上手くいけば義骸の影響で人間になるだろうが、最悪の事態は、藍染に殺されてしまうだろうという事も容易に想像がついていたという事だ。

私の予想を超えたのは、その選ばれた死神が''朽木''ルキアだったことだけ。私達は、私達の都合でルキアを死神から遠ざけ、崩玉を隠し、そのせいで彼女を命の危機に晒した。それなのに私達の都合で彼女を助けた。私はルキアの苗字に引っかかっていたから、喜助とは微妙に目的は違ったけれど結局行動は同じだ。自分勝手な理由で、彼女を助けに来た。

私は真っ直ぐにルキアを想って助けに来た一護とは違う。ルキアにお礼を言われる資格なんてない。


「ごめんね」ともう一度言うと、ルキアは少し戸惑った色を瞳に浮かべて「違います」と否定した。



「どんな理由でも、私を守ってくれた。あの時、藍染に命を奪われる可能性は雪音にもあった筈だ」

「それでも、命をかけて私を、私と兄様を守ってくれた…それだけでお礼を言う理由には余りある」

「もう、雪音、だなんて言えません。ありがとうございました。朽木雪音殿」

そう言って丁寧にお辞儀したルキアに、「いいよ、私そんな立派なことしてないよ」と返す。私がルキアをいつの間にか実の妹のように見ていたように、彼女は彼女なりに藍染の言葉を受け入れ、飲み込み、私を朽木家の1人として見てくれているのだと急に実感した途端、なぜだか涙が出そうになって、それを堪えるのに必死だった。








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