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暗海の内のまどろみ。艶かしい空は、そのグロテスクな紋様を一刻一刻と変えていく。いつまでたっても慣れることはない、狂気を浮かべた天の下で、この身を削る感覚。血潮の流れと、確かな鼓動を感じる。 「私は違うの・・・」 赤い涙を流したかつての人であったもの。ここに生きる術を失くして、しかし死ぬことを拒むもの。目を閉じれば、悲しみが聞こえる。痛みを感じる。耐え切れなくなって、ついに走り出した。名無しに向かう場所なんてどこにもない。ひたすらに、絶望だけが彼女に迸るのだ。
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