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なんという失態だろう。だが気づいた時はもう遅く、半日以上経っていた。
私達E組が見事試験結果のご褒美として勝ち取ったリゾート旅行。なんだかもっと別の名前だったような気もしたが、まぁうちらの場合、ころセンセー暗殺計画が目的で行く訳なので気にするところでもなかろう。ちなみにこの間の私マフィアです宣言は物珍しさ故の一瞬の驚きだけで終わり、後は何事もなかったかのように前と変わりなく接してくれている。いや、変わりなくとは間違いか。直後はマフィアに関しての山のような質問を処理するのに大変だった。だけど、そろそろこの子達の将来が不安になる。こんなに裏の社会へ足を突っ込んで、どうするつもりなのだろうか。まぁいざとなれば記憶を消す処置があるらしいからそれを用いるのだろうが、その間の築き上げた友人関係やらを喪くすのは惜しい。なので安易に裏社会へ興味を持たないことを望むしかない。本当にそういう世界を見るのは汚い大人だけで十分だ。
そしてその汚い大人含む27名の生徒は壮大な暗殺計画を今夜、実行した。私は本当に最後の最後、凛香と龍之介の射撃後のダメ押しの一撃。センセーの真上から対センセー用の刀で一突きする役目だった。
正直、私でも成功したと思った。途中までは烏間さんと見ていて、二人の射撃の段階に入った時点で瞬歩で移動した。

『…こんな、…まさか』
『生徒をちゃんと信用しないとダメですよー。烏間センセ』
『…しっかりトドメ刺して来い』
『りょーかいっス』

二人の弾は誤差僅かで向かって行った。私も着弾より僅かにズラす様にして叩き込みに行った。違和感を覚えたのが刀が触れる直前。私が完全に気配を消していたのもあってセンセーはかなり慌てていたが、あと数ミリというところでの大爆発。ちなみにセンセーが慌てたのはこの大爆発に私が巻き込まれることが分かったから。そんなこと心配されなくともどうにでもなる。やや巻き込まれたが、鬼道で相殺しながら器用に後ろへ吹っ飛んで、状況が見えて。
予想以上に落胆した。
タイミングもターゲットの精神的揺さぶりも見事だった。生徒の士気もかなり高まっていたし、雰囲気は最高潮に良かった。ヤレるなら恐らく今夜が最大のチャンスだろうとも感じていただけに、とんでもなく生徒達の落ち込み様が可愛そうだった。しかもなんだあのふざけた究極体は。実弾五発に八十と九十番代の鬼道一つずつ。人のいないところで十分に憎しみを込めてやったのにヒビ一つ入りやしない。 でもセンセーの怯えた顔が見れただけちょっとすっきりした。

『ていうか前々から聞こうと思ってたんですけどそれは一体何なんですか!?カメハメ波!?』
『あんな発動速度が恐ろしく鈍いモノと一緒にしないで貰えますかねぇ【赤火砲】』
『ウぎゃあ!!』

だが、状況は違う方向へと一気に展開した。ラウンジに戻って休息をしていると、バタバタと生徒達が倒れ始め。孤島という狭い空間だ。何かしらの感染症でも蔓延したかと思いつつ、その感染経路を考えていて思わず口に手を当てた。被害にあっているのはウチのクラスの生徒のみ。出された三食をまず疑うも、同じモノを口にした先生方には何ら害はない。だとすれば他に共通に出されたのは、ウェルカムドリンク。選択的になるが、確かに多くの生徒達が手に取った。そして、私も。不幸中の幸か、唇を湿らせる程度で一口分も飲まないうちにメグ達から声が掛かり泳ぎに出たから今の所症状に現れてはいないが、体内に摂取はしている。失態というレベルじゃ済まされない。即効性毒ではない様だが、自分もいつ症状が出るか分からない。

「…四楓院。まさかお前、」

そんな私のしまったなと言う顔を見たのか、生徒の容態確認を部下二人としていた烏間先生が小声で話し掛けてきた。小声でも焦った様な感情を目一杯盛り込めるのは一体どういう技術なのだろうか。感心したい所だが、発言内容はあまり宜しくない。当てていた手を下ろして眉を潜めると、イタリア語に切り替えた。

〈烏間。その名で呼ぶなと再三注意した筈だが〉
〈だが!〉
〈口に含む程度だ。即効性はない。無味無臭とは中々よく出来ている。感心するよ。…ところで一つ、提案をしましょうか烏間先生」

距離は十分、声量も絞ってあるが、姿は見える。それをカルマは目敏く見付ける。私のネタバレ前から多分何かしらの違和感に気付いていたんだろう。度々絡んでは来たが、付かず離れずの関係であって、私としては居心地は良かった。そんな彼の視線がそろそろ痛いなと感じていたので、最後日本語に戻して同時に自分の立ち位置も生徒に戻すと、ニッコリと笑った。恐らく烏間先生も気付いている。

「…なんだ」
「犯人であろう男の予想と場所はほぼ特定出来ています。私と烏間先生の二人で十分に叩けると思うけど、どうします?」

目を見開いて驚いたような表情を浮かべる彼に、ボンゴレ専用回線のスマホを見せると偉く納得してくれたので思わず笑う。行くなら早いうちに行きましょうと促していると、犯人らしき人物から連絡が入った。

「一番小さい男女?」

そう呟いた烏間さんの眉間へみるみるシワが寄っていく。ウチのクラスのおチビさんは、渚とカエデだ。その二人に解毒薬と引き換えにころセンセーを持って来させようとしているらしい。
呆れてモノが言えないとはこのことだ。私一人で行って終わらせてくる。そう言おうと烏間さんの肩を叩こうとしたのと彼が私を振り返って目を見開いたのはほぼ同時だった。

「…但し、ボンゴレが一人で動くようならこの話は無しだ。交渉も何も関係なく、解毒薬は破棄する」

どうやら、何があっても私を'生徒'という立場から下ろしてはくれないらしい。

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