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ざんぱくとう


リヴァイの後ろに乗ることになってしまったが、それはそれで良かった。大体乗ったこともなかったのだし、万一馬に乗れたとして僅か数時間で馬上での戦闘が完璧にこなせる程マスターは出来なかっただろう。それに、彼の後ろにいた方が色々と都合が良かった。

「行け」
「了解」

一応リヴァイの補佐なのでリヴァイ班の一員として動くことにはなっている。昨日も連携を確認したし自分の役回りも理解したので、少なくともワイヤーが絡まるなどと言う悲惨なことが起きない様にはなっている筈だ。だがしかし今日の兵士長様は私にチームプレーをさせる気はないらしい。先程から想定巨人人形がガサリと音を立てる度に、行けだの削げだの宣う。最初は一瞬間があったがそれも5度目となれば思わず瞬歩をし掛けるレベルで従順になっていた。

「遅ェ」
「…こんなもの付けてるからですよ」
「慣れろ」
「相変わらず無茶仰いますよねぇ」

他の班がカッターで斬り込もうとしている直前に滑り込んで削ぎ、直ぐさま離脱して馬の背へと着地した。その直後に出るお言葉は5度目も変わらず文句である。ていうかお前の班はいつ出動するんだ。
ちなみに今日は試しにとカッターナイフを付けて来た。そもそも両利きであるので、両手持ちスタイルに抵抗はない。カッターの使い方は何度か彼らを見ているので問題ないが、実際やってみて思った事がある。

「……悔しいけどコッチの方がやり易い」

リヴァイと背中合わせになる様に座りながら両手のカッターに視線を落として呟く。それが聞こえたらしいリヴァイが何を今更とでも言うかの様に鼻を鳴らした。

「どうやって誰が作ってるんですか、コレ」
「知らねぇな。金属の配合も専任の職人しか知らないらしい」
「企業秘密的な」
「そんな感じだ」
「立体機動も」
「同じだ」
「…へぇ……」

この世界に'電気'という技術はない。というかその概念がない。この壁の中に引きこもってから100年だとは言うが誰かしら研究したりしなかったのだろうか。壁外調査はまだ経験したことがなく直接見た訳ではないのではっきりとは言えないが、扉を遠目に見る限り上に引き上げるタイプのものだ。それもきっと物理学を適用した人力だろう。
話が逸れたが、この立体機動装置はそんな電気がないこの世界にしては余りにも見合わない高い技術だ。これだけの頭があるなら何故電気というモノに発想が行かない。いや、行かない筈がないのだ。ミケから立体機動の具体的構造を聞いた時、余りのズレに思わず嘘やろと言ってしまった。

「……そろそろ班で動く。その崇高な頭で色々考えるのは勝手だが、足は引っ張るんじゃねェぞ」

そうやって疑問は多々あるものの、一応この世界に対して理解し納得はしている。それに価値観を調節することもした。
故に今私が最優先で行うべきはリヴァイ班の一員として輪を乱すことなく綺麗に収まること、だ。さもなくば巨人に喰われることも十分ある。団体の一人として行動すると決めた限り、いくら一人だけ力が突出していたとしてもそれが生き残るとは限らない。

「誰に言ってるんですか」
「テメェにだ、新兵」
「非常に心外なのでその呼び方、今日で無くしてご覧に入れましょう」

そう言って馬の上に立つのと同時に、リヴァイの号令が飛んだ。



























カッターナイフが相当使えると分かってから困ったことが一つある。

「…風車、どうしよう」

刃を入れるケースが両サイドにあるせいで腰に刀を提げる場所がないのだ。一応自分の部屋を与えられているので部屋に置いておくことは出来るが、二つの意味で心配である。一つは盗みだ。この世界は貧しい。調査兵団の建物に誰が進入するかとも思うが、本当に困窮している場合、可能性は十分に考えられる。更に私の存在は恐らく大半の兵団の方々に反感を買っている筈だ。まるで子供の様だが、そいつの持ち物を盗んでやろうと思うこともあろう。まぁ、風車は霊圧で追えるので問題はないが、全くの他人に触られることが嫌なのだ。そして二つ目が、私の霊圧コントロールである。虚化の抑えは氷雨の斬魄刀の雪月が主にやっていたのだが、それは副長に渡してしまったし、今は風車を頼るしかない。ちゃんと相殺する薬は持っているので問題はないと思うが、未だ理解し切れていないこの世界で何が起きるか分からない。本当にドラえもんのスモールライトが欲しい状況である。

「ナマエ、ちょっといいか」
「はい」

訓練から帰ってきて、自室で立体機動を外しもせずにブツブツ呟きながら斬魄刀の位置を試しているとドアをノックされた。声で誰かを判別出来るほど親しくも長くもない付き合いなので誰だろうかと思いながら開けると、エルヴィンがそこに立っていた。

「…如何なされましたか」
「…その言葉、そのまま返しても良いだろうか」

訓練が終わってから一時間は経っている。完全フル装備の状態は誰が見たって疑問を持つだろう。自主練かと聞かれたが考え事をしていたと笑って誤魔化した。斬魄刀を持って行きたいのだがなどと言えば、私にとって斬魄刀がどの様な存在であるかを説明する必要が生じる。とても、面倒である。

「一ヶ月後に控えている壁外調査に関して話しておきたいことがあるのだが、リヴァイの部屋まで来て貰えるか」
「…今直ぐに?」
「ああ」
「分かりました。即刻着替えますので、先に向かっていて下さい」

話しておきたいこと、とエルヴィンは言った。壁外調査に私が行くことは既に決定しているらしい。今回の演習は中々頑張ったのでそれが認められたのだろう。こんな訳のわからないところで死にたくはないが、身体が鈍るのと暇なのはつまらない。
ややこしい装置と装具を全部外し、真選組のジャケットなしミニスカ隊服へ着替えると、斬魄刀を腰に差して部屋を出た。ちなみにハンジやペトラから貰った服は丈が長いスカートばかりで今修繕中である。

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