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今世紀最大の大喧嘩。




「喜助!」

「なんスか?」


喜助が意図的にあの場の雰囲気を壊したのは明らかだった。その後、副長に言って私の離れで話した時も何処かというか普通に棘があった。最後の方なんて、退も首を傾げるものだった。ちなみに話した内容は最近かぶき町で猛威を奮っていた吸血鬼が歳三さん達の世界から来たモノであるということで、前に立てた推測と殆ど相違はなかった。でも、話した内容はそれだけに留めた。


「なんで言わなかったの」

「何をっスか」


話してしまえばそれでこっち側は納得する。元よりこっちも吸血鬼の対策に困っていたのだ。そんな中、偶然かどうかは知らないがより詳しい事情を持った人達が来た。吸血鬼の話をした時から素直に話してくれれば良いものを、まぁ変な疑いをかけられると思ったのも分かるが、此方の情報収集と頭をなめてもらっては困る。ストレートに真相を突けば、図星だったようで、頭を下げて是非俺らを使って事件解決に役立ててくれと言ってきた。この席には当然局長も同席している。そんな勇さんと歳三さんの様子に心動かされぬ筈がなく。あっさりと分かったと言って協力体制が敷かれた。今は、解散と同時に朝届いた隊服を試着するために退と涼が案内している。副長と総悟と真子も面白そうだからとついて行った。
私は、一先ず副長の護衛を真子に任せ、屯所を後にしようとする喜助を追っかけて、屯所上空で呼び止めたところで冒頭へと戻る。更に問いかければ返って来た言葉に表情を消すと、僅かに霊圧を流した。


「…せやな。言い方が悪かった。何故、"追及しなかった"」

「………」

「珍しいな、あんたが黙りも。何か言えへん事情でも…」

「名前」

「…何」


思わず一拍置いて返事をしてしまった。呼び捨てなんて珍しいにも程がある。最後に呼ばれたのは百年ぐらい前か。


「言えない理由はあるよ。それを隠したい理由も」


更に口調まで放棄して来た。それは相当に機嫌が悪いと取れる。だけど、喜助とは昨日からさっきの台本の直前まである一時期を除いてずっと無線で繋がっていた(ちなみに台本の最中に無線を外したのはそっちに完全に集中する為だ)。夜一達との推測も私の独り言もこっちの状況もお互い筒抜けだってことだ。つまり共有する情報は常に同じでないとおかしい。そもそもこの話し合いで彼ら異世界組と吸血鬼が関わっていることを言うつもりだったのに何故か'外せ'、と直前で言ってきた。違和感はあったが、逆らう理由もなかったので従ったが、やはりおかしい。彼が怒りの感情を湛えてることがおかしいのだ。しかもあの台本を進める僅か数分の間での気変わりだ。
唯一考えられるのは信女との接触。そこで何かの情報を貰ったと考えるのが妥当だろう。そして、信女が戦闘専門で情報収集の類は全く得意分野としていないのを考慮すると、


「異三郎か…」

「………」

「無言は肯定と取るよ」

「どーぞ」

「喜助。いい加げ、」

「名前」

「…………」

「…………」

「………何」


扱い辛いにも程がある。こっちも苛立ちが募って来た。既に無意識にお互いに刀に手を掛け、霊圧がダダ漏れだ。抜いて無いのが不思議なぐらいで。明らかに喧嘩に近い状態だと真子にバレてる。


「今日は大分しつこいね」

「あんたの頑固さには敵わないよ」


そうかもね。
喜助がそう言った瞬間にはお互いに刀を合わせていた。




















あの喜助が珍しく怒りを露わにしてるのは気になったが、それに気付けるのは俺らと銀時ぐらいやったから放っておいた。直前で話す内容も変えて来たが、喜助のことだから何かあったんやろ、と思って放っておいた。また、家帰ったら聞けばええやろと思て。
だから、面白そうな異世界の試着に行くことにしたんやけど、名前はどうも気に食わんかったらしい。俺に土方の護衛任せて、迷わず喜助の後追って。まぁ可愛いやっちゃなと思て大して気にしてへんかったんやけど。
不意に膨れ上がった二人の霊圧に思わず眉を潜めた。名前だけなら分かる。あいつはまだお子様やから。だけど、まさか喜助の霊圧も上がるとなるとちょっと異常や。なんや虚かなんかにでも会うたんかと首を傾げた俺が、一瞬で変わった二人の霊圧に瞬歩をしようとしたのと、帰った筈の銀時が襖開けて怒鳴ったのが同時だった。


「平子!!」

「分かっとるわ、ボケ」


頼んだでと銀時の肩に手を起き、一度は止めた瞬歩をすると、上空で喧嘩の真っ最中だった喜助の方に刀を振り降ろした。


「っ!平子サン…」

「喜助、お前何しとるんや」

「真子兄ちゃん!!どいて!!」

「アホ、お前もだ。病み上がりで何してんだ」

「け、拳西兄ちゃん…」


ちょうど、何回か撃ち込んで距離を取った時だったらしく都合良く出来ていた距離を利用して、間に入り込んで喜助に刃を向けた。突然の登場に驚いてる喜助だったが、名前はすぐにどけと言って来たのをみると気付いていたようだ。まぁ、後ろから拳西に止められてたけど。そして何か喋りかけた名前が咳き込み、ついでに最初から気になってた名前の異常な息の上がり具合に眉を潜めると俺は喜助を殴った。


「名前殺す気か」

「…いえ」

「大人気なさすぎるで、喜助」


喜助が怒ってる理由。
名前は恐らく信女からもたらされた情報によってだと考えてる。俺も状況から考えて間違いないと思てる。だけど、それは単なるリミッターが外れるきっかけになったに過ぎない。そもそも喜助は昨日から機嫌が悪かった。なんでかって、名前が風間とかいう鬼と交戦する直前に何故か無線切って、意識がぶっ飛ぶ程の大怪我を負ったから。何で切ったのかは謎。意識取り戻した名前に聞いた所で理由は返ってこんかった。だけど、名前にも無線切る程の理由はあった。喜助が名前の了解なしに銀時を巻き込んだからや。しかもかなり強引に。でもそれがどーして無線切る方向になったのかはやっぱり謎や。
喜助としては名前がむっちゃ心配やったんやろ。つまり愛情の裏返しみたいなもん。でも名前としては最初から総悟が暴走したりして穏便にことが進まない上に銀時が巻き込まれたばかりか、思わぬ怪我と予想外の変更に溜まっていたストレスが爆発した形だ。本来だったら気が済むまでやっとけって放っておくが、名前の怪我が怪我だ。喜助も分かってはいるはずだが、多分ぎりぎりまで止めないだろう。でも俺らとしては名前が可愛い訳で。俺と屯所の側にいた拳西が止めに入った。ちなみに白もいたが、さっきひょっこりと登って来て名前の背中をさすってる拳西から名前の刀を預かって鞘に仕舞ってる。


「…スイマセン、平子さん」

「俺に謝ってどない、」

「ごめん、名前。僕が悪かった」

「……………は?」


驚 い た。

俺だけやない。拳西と白も驚いてあんぐりと口を開けてる。
喜助が、さん付けしなかったどころじゃなくて、敬語も使わんかった。なんや、天変地異と地球滅亡が一変に来るんか。


「……いい。私も悪かった」


だけど、それは偶にあることなのか、いつものことなのか。名前は荒い息を整えながらも普通に返していた。

























ー今世紀最大の大喧嘩ー

(…浦原と四楓院が、喧嘩してんぞ)
(しかも口じゃなくて刀でですよ)
(珍しいこともあるもんで)
(旦那は見たことあるんですか?)
(いや、ねぇよ。初めて見た。…けど)
(けど?)
(夜一の話だと、百年ぐらい前にやった時は秘密基地が一つダメになったらしい)
(………良かったな、平子と六車がいて)
(どうしたの、涼君。顔青くさせて。具合悪い?)
(い、いえ。ただ、あのまま順調に霊圧上げて解放されてたら、俺ら消し飛んでたな、って)
(……………………良かったな、平子と六車がいて)

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