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珍しく。




「さてと、左之助さん。残りは貴方だけですが、私がお相手致しましょうか」


中庭に積まれた刀を横目に真子が斬魄刀を収めると、歳三さんを除き唯一手元に武器が残っている左之助さんに話を振った。他の人と同様に目を見開いて驚いていた彼だったが、私の声で初めて気付いたように自分の手元を見た。しかし、左之助さんは困ったように笑うと槍を足元に転がした。


「出来るワケねぇだろ。側にそんなとんでもない兄ちゃんが控えてて」

「彼は手出し致しませんよ。真子が貴方の槍を取らなかったのは何故だと思います?」

「…何でだ?」

「槍が苦手、だからですよ」

「ちゃうわ、アホ。餅は餅屋って言葉があるやろ。それに習ったんや」

「へぇ、じゃあ長物でも相手出来る、と」

「なんやその言い方。まるで俺が長いの苦手みたいやんけ」

「ああ、そう聞こえになられてるのでしたら、大丈夫ですよ。今日も真子の耳はお元気です」

「名前。バカにしとんの分かっとるで」


案外左之助さんは聞き分けの良い人で助かった。残りは俺だけ、みたいな雰囲気にされたらどうしようかと思ってた。


「…オイ」


なんて一息吐いてると、歳三さんが唸るように呼びかけて来た。きっと彼は私がさっき言ったことの意味を知りたいのだろう。だけど、そんな無駄な時間を過ごすつもりは一切ない。


「なんでしょう、とは言いませんよ。先ほどの貴方の部下達が取った行動で一目瞭然です。此方は善良な市民にも被害が出てるんだ。むしろ私の方が説明を求めたいぐらいです」

「…それは、」

「無理だ、とは言わせねぇよ」


そう言って口を挟んだのは、私の後方から現れた副長だ。一緒に総悟と退と局長もいることから、ちゃんと私の言ったことを守ってくれたようだ。彼らには真子が斬魄刀を解放するから異世界組と一旦離れるようにと言ったのだ。


「十四郎…」

「歳三。お前は上手く隠してたつもりらしいがな、コッチには優秀すぎる補佐と監察がいるんだ。そもそもお前らを疑い始めたこいつらの前で、色んなリアクションをとった時点でアウトなんだよ」


私達より前に進み出ながらそう言った副長に珍しく感動してしまった。まさかこんな所で褒めて頂けるとは、


「開いた口が塞がらない」

「それは普通呆れてる時とかに使うよな、名前。どういう意味だ、コラ」

「え、だって。そんな人前で褒めるとか…十四郎、大丈夫?寝てた方がいいんじゃない?永遠に」

「それじゃあ困りまさァ。ちゃんとやるべき事はやって頂かないと」

「ああ、副長引き継ぎね。大丈夫。私それ出来る権限持ってるから」

「マジですかィ?じゃあ安心して寝て下せェ、土方さん。永遠に」

「てめぇらが永眠するか」

「アンタらそろそろ黙っといた方がええんちゃうか?締めなアカン話も一向に締まらへんで。いや、マジで」


右手を斬魄刀の柄に置いて呆れたように言う真子に、副長もそうだろと言わんばかりの溜息を吐いた。失礼な。


「……いつ、気付いたんだ」


そんな漫才をじっと無表情で見ていた歳三さん。下らないと思ったのか、観念したのか。一つ小さく溜息をついて苦笑しながらそう漏らせば、総司さんを始めとする異世界新選組が一斉に歳三さんの方を振り返った。


「土方さん!?」

「副長!!」

「まさかこいつらに言っちまうのか!?」

「俺ら帰れなくなっちまうかもしれないんだぞ!?」


そして口々にそんなことを言っているが、それで余計コッチの指摘したことが正しいと証明されたとわかっているのだろうか。


「…喋り過ぎだ、平助、新八。今のお前らの発言で話さざるを得ない状況になっちまった」

「「…あ、……」」


やはり歳三さんは分かっていたようだが、やはり二人も馬鹿だった。しかもそれはどうやら日常茶飯事らしく、一さんと総司さんの何処か慣れた呆れ顔がそれを物語っている。


「斎藤」

「はい」

「千鶴を連れて来てくれるか」

「…御意」


そう言って軽く頭を下げた一さんだったが、その顔には少々納得がいっていない様子が見えている。だが副長の言うことは絶対、というこっちの斎藤終には見られない特徴を持つ彼は色んな感情を押し込めて離れの方へ走って行った。それをなんと思ったか知らないが、じっと見ていた歳三さんが重く口を開いた。


「…四楓院」

「なんでしょうか」

「以前、その坂田とかいう男の家に行った時に聞いた話だが」

「はい」

「お前の言う通りだ。今、この世界で被害をもたらしている白髪に赤目の化け物はあの男が言っていたように確かに異世界から来たヤツだが、」


「その異世界はあなた方のいる世界と同じだった」


正に確信めいた言葉が漸く彼自身の口から出ようとしていた時、不意に良く聞き慣れた、しかしこの場にはいなかったはずの声がその先を邪魔した。聞こえて来た方向は中庭の方。溜息を吐きながら其方を見ればやはり予想通りの人物で。何時の間にやったのか、今は綺麗に並んでいる異世界組の刀の前に扇子を片手に立っている。


「…誰、キミ」

「ああ、これはスイマセン。アタシは浦原喜助と言いまして、名前さんの保護者のようなモンです」

「保護者、?」


突然現れた見知らぬ怪しい男に自分達の秘密を言われたら誰だって警戒するだろう。総司さんの殺気は理にかなった行動である。
それにしてもこの空気。漸く穏便にことが進みそうだったのに、見事にぶち壊してくれたが喜助は一体どうするつもりなのだろうか。


「お久しぶりっス、歳三さん」

「…昨日会ってんのに久しぶりとは言わねぇだろ、浦原」

「名前を覚えて頂いてたとは光栄っスねぇ」

「微塵にも思っちゃいねぇことを言うんじゃねぇ」

「…アララ。見かけ以上に鋭いお方のようで」


なんか、変だ。
喜助はいつも飄々としてて中々その感情を掴みにくい。だけど、今日は明らかに何らかの感情が滲み出ている。まぁそうは言っても副長達には分からないぐらいで、付き合いの長い私達が首を捻るぐらいの些細なモノであるが。ちなみに銀時は別だ。あいつは気味悪いぐらいに鋭いから今もきっと気付いている筈だ。


「さてと、十四郎さん。恐らく僕の言いたいことはお分かりでしょう。その通りにして頂けますか?」


私と真子、それに銀時が内心首を捻っていると、喜助は不意に副長に話を振った。その声と表情は歳三さんに話しかけていたのと打って変わって、いつも通りだ。


「…相変わらずエスパーか、お前は」


そう言って苦笑している副長の表情もいつも通りだ。

…だけど。


「じゃあ、異世界の皆様もご同行願いましょうかねぇ」


そう言って歳三さんを見る喜助の表情だけはやはりいつも通りではなかった。






































ー珍しくー

(…オイ)
(なに)
(喜助、なんか怒ってねぇ?)
(…へぇ、銀時やっぱアレに気付けるんだ)
(どういう意味だよ)
(喜助と結婚する日も近いってことだよ)
(オイコラ、ちょっと待て。どこをどうとったらそんな解釈になった)

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