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やっぱ神様怖いわ。




{銀時ーちょっと屯所まで来てくれる?}


太郎くん、ちょっとお遣い行ってきて。そんなノリで名前から電話がかかって来たのは今朝のことだった。でも、いやちょっと待てとか言ってる暇もなくて。それだけ言うとブツリという音と共に電話は切れた。そんな一方的な電話をされりゃ不満は当然ある。だけど喜助同様名前の言動に理由がなかった事はまずない。しかも今回に至っては喜助の意味深な発言も考えると俺に何か関わりがある事は必至。だから、渋々腰を上げて屯所の名前の部屋へ来たのだが、その中を見て思わず目を見開いてしまった。


『…ドンマイ、銀』


あいつの部屋の前にでっかいダンボールが二箱乗った台車が不自然に置いてあって、まさか昨日のヤツで倒れてんじゃねぇかと若干焦ったのだが別の意味で焦った。だが直後。不意に背後からとんでもねぇ殺気を感じた。そりゃあ標的を名前から俺に変えて、狭い廊下で剣先を突き出し続けてた見廻り組副長様の殺気が可愛いく思えるぐらいのを。
…だけど。


『…え、…?…』

『動かないで』


本日二度目の焦り。
当然、迷わずというか反射的に木刀を抜いてソレに対処しようとしたのだが、何故か木刀をがっちりと掴まれてしまったからだ。だけどやっぱり名前の行動には意味があって。一瞬風が吹いたなと思うと同時に耳にやたらと重く鈍い金属音と、視界に俺の前で刀を構える信女と真子が入った。その奥には残りの異世界組が目を見開いているのが見えた。
あの距離であの早さで防御を止められてまず俺が今生きてることなどあり得ない。いくら真子が死神でも、いくら信女が速くても、だ。あのタイミングで間に合う筈がない。それに何より斬りかかった本人たちが一番驚いている。何故斬れていないのか、と。


『…間に合って良かったねぇ…』

『お前、俺の命何だと思ってんの?』

『いちご牛乳一本分』

『よーし。その喧嘩買った』


俺の方を見てにやりと笑った名前の手には何時の間に抜いていたのか斬魄刀が握られていた。少なくとも俺の木刀を掴んだ時には抜いてなかった筈だから、ホントに僅かな間に抜いたらしい。なんて驚いているが、つまり俺が死なずに済んだのは名前の斬魄刀の能力のなんかだったワケだ。
と、そんなことを考えながら、真子とイケメン総一郎君の会話を聞いているのが今の状況。隣で名前が真子が猿で総司さんが犬かな、なんて呟いている。俺は逆だと思う。


「餓鬼って…君も一緒ぐらいの年齢に見えるけど?」

「人を見かけで判断するんやないで。お前の百倍は生きとるわ」

「つまらない冗談だね、ソレ。君、頭おかしいって言われない?」

「…ええ度胸やな、餓鬼。人間の分際で」

「総司、斎藤」
「信女、真子」


刀をギチギチと鳴らしながら方や口喧嘩、方や無言で無表情を貫いていた双方に同時に声がかかった。当然、イケメントッシーと名前だったわけだが呼ばれた四人はそれぞれ主の方をチラリと見て何だと言いたげな目を寄越した。


「刀を下ろせ」

「此方も同じく。下ろしなさい」


それぞれのトップ的な奴がそう言う時、双方にとって危険はないと言う意味を指す。だが、異世界組はそうは思わなかったらしい。明らかに驚いたような顔をして反論の声を上げた。


「土方さん、何言ってるんですか!?」


しかも、


「……副長。申し訳御座いませんが、その指示には従い兼ねます」


イケメントッシー信者の斎藤まで。
コレは何だか変だ。名前もそう思ってんだろ。そう思って隣で斬魄刀を未だ右手に持っている名前の顔を見た。


「…何」

「何、じゃねぇよ。分かってんだろ」

「ええ、分かってるよ」


総司さんと一さんの反応の意味がね。
その言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。この際、俺の意図する質問に対する答えじゃなかったことは置いておこう。それに、別に予想してなかった訳じゃねぇ。俺も喜助から聞いてたから分かってたことだし、当然名前だって分かってるもんだと思ってた。だけど、それを発する声の大きさは予想出来なかった。


「…どういう意味だ」


異世界土方に聞こえる程のモノだとは。


「そのままの意味ですよ。私は貴方達が"何"に対して過剰な反応を示しているのかを知っている、と言ってるんです」

「言ってる意味が分かんねぇな。なんだその"何"か、ってのは」


眉間にシワが寄りまくっている歳三とは対象に薄っすらと笑う名前。昔はある程度しか似てないと思っていたが、今はわざととしか思えない程喜助に激似だ。今の不敵な笑みとか、特に。あいつの帽子から覗く僅かな顔のパーツと同じ雰囲気を醸し出している。誰だ、こいつをこんなに育てたヤツは。…喜助か。
そうやって順調に喜助へと近付いている名前は徐に斬魄刀を握り直すと、総司さん、と呼びかけた。


「なに…っ、!?」

「…あら、意外」

「っ、なんのつもりかな?」

「だって。そんな血濡れた刀、【逆撫】が可哀想」


今の会話で分かった奴は分かっただろうけど、俺の真横にいた名前がいつ迄たっても刀をひかないどころか更に力を入れようとしてる総司に突然斬りかかった。しかも、ノーモーションで。名前が意外だと笑ったのはコレが訳だ。普通はなんの予備動作もなしに斬りかかられたら、刀を弾き飛ばされたり体制を崩す。だが、総司は最小限のブレだけで見事、横からの名前の風車を受け止めた。まぁ、名前が多少手加減したってのもあるんだろう。


「逆撫って…名前、俺の心配は?」

「してへん」

「うわぁ、流石にその言い切りはヘコむわ…」

「はいはい。好きなだけヘコんでくれて構へんで…でも。ヘコむ前に"お願い"ね」

「…分かっとるわ」


位置的に俺の前にいる真子が自分よりやや前に移動した名前に悲しそうな顔を見せるも、何だか意味深な言葉を境に一瞬で二人とも目が真剣になった。ていうか、お願いってなんだ。そう思ったのも束の間。総司が若干無視されたことに文句を言おうと口を開けたのも束の間。
空気が一気に変わったのと同時、真子の呟き声が耳にスッと入って来た。


「…【倒れろ 逆撫】」


そのほんの少し前、名前と信女が同時に刀を思い切り薙ぎ払い、お互いの相手を強制的に後ろへ飛ばした。


「う、っわ!」

「っ、…」


どうやら男尊女卑の思想が未だ残るらしい異世界組は女二人にまさか吹っ飛ばされるとは思ってなかったらしい。咄嗟のことに対応し損ねて、歳三の足元付近に揃って尻餅を着いている。その直後、間髪入れず永倉と平助が飛び出して来た。


「!?待て、新八!!平助!!」


流石、副長様か。真子の斬魄刀解放に何処か違和感を覚えて止めている。…が。時既に遅し、だ。
僅かに遅れて尻餅を着いていた二人も永倉達に続いて走り出し、その全員が名前と信女に、いや、正確には俺に向かっていた四人の手にはもう刀はなく。


「「「「!?」」」」


次の瞬間には中庭の真ん中辺りに四本の刀が落ちた音が響いていた。いや、ついでに奴らの腰に差さっていた脇差もだから八本か。
その音にやや遅れて中庭を見た異世界組の顔は驚愕の表情を浮かべていた。だが、狭い廊下で器用に解放した逆撫をぐるぐる回す真子はそれを見てニヤリと笑っている。


「…ねぇ。気付いた?」

「何をだ?」


そんな中、自分の刀を鞘に収めながら信女が静かに問いかけて来た。だからそうやって聞き返せば、珍しく呆れたような表情を浮かべてこっちを振り返り、何かの冊子を俺の顔の前に突き出した。


「読んで来なかったの?」

「…は?」


ジャンプは四日前に読んだぞ。そう思いながら信女が差し出している冊子を取り、中を見て思わず間抜けな声を上げてしまった。


「ちょ、おま、コレ…」

「脚本は喜助」

「そういうことを聞いてるんじゃなくてな…いや。こんなこと思い付くの喜助しかいないだろうけども」

「監督も喜助」

「うん。そうだろうね」


だって、そこには俺が名前の執務室に着いてから今の今迄起きたことが事細かに書かれていたのだから。誰が何処にどう動くのか、どう喋るのかとか、全部。


「ほらね。台本通り」

「……ああ、そうだな」


つまり、どういうことかって。
今迄起きたことは全て喜助の予想範囲だったってことだ。
















ーやっぱ神様怖いわー

(久々に背筋が寒くなった)
(それを信じて疑わない名前と真子が持つ)
(異常にすら思える信頼度に)

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