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何も言わないのは。




なんやかんやあった翌朝。
宴会などで使われる大広間には、真選組と新選組が勢ぞろいしていた。真選組は、前に立つ名前達から見て左から一番隊隊長〜十番隊隊長と並び、その後ろに二十人前後の隊士が。新選組は名前と十四郎と勲の隣に左から勇、歳三、一、平助、新八、左之助、千鶴の順で。絶世のイケメン揃いに涙する隊士達をよそに名前が手を二回軽く叩くと、真選組側は一斉に姿勢を揃えた。瞬時に全員の雰囲気が変わった隊士達に、新選組が驚きを隠せない様子で名前を見る。その補佐官の目は真剣味を帯びていて、思わず息を止める程だ。

そしてそんな雰囲気の彼女に、全員が固唾を飲んで見守っていた時だった。名前の口が動いた。


「はーい。全員集まりましたね?各隊隊長は点呼完了してますかー?」

「「「「はーい」」」」

「じゃあ、新しく入ったお友達を紹介しまーす。

左から、新選組局長の近藤勇さん、副長の土方歳三くん、三番組組長の斎藤一くん、八番組組長の藤堂平助くん、二番組組長の永倉新八くん、十番組組長の原田左之助くん、副長小姓の雪村千鶴ちゃん。

数字と名字が一致してる子はその隊に入って主に隊長業務を手伝って貰いまーす。

ここまでは、いいかなー?」

「「「「はーい。名前せんせー」」」」

「はい。じゃあ続けまーす。
昨日隊長達には伝えたけど、異世界人と言っても彼らは新選組です。その上組長レベルなら、充分此方の真選組の隊長レベルとも匹敵するでしょう。という訳で隊長と同じ扱いにしたのですが、各隊を仕切るのはウチの隊長ってところは変わりません」

「「「「はーい」」」」

「あと一番組組長の沖田総司くんもいるんだけど、彼は肺結核が治り次第復帰でーす。緒方先生は一週間と見てますので」

「「「「はーい」」」」

「千鶴ちゃんは女中として頑張って貰います。既に女中頭の清瀬さんにもお願いしてありますが、彼女に手を出したら…………分かってますねー?夕飯が人間のフルコースになる恐れがありますので気を付けてねー

魂魄が料理に混ざったら私でも神様でも救済不可でーす」

「「「「気を付けるとこそこォォオオ!?」」」」


「「いい加減にしやがれテメェらァァァアアア!!!!」」


あれだけ真剣な雰囲気を漂わせていたのに、いざ始まってみれば小学一年生の転校生紹介。内容はきちんと重要事項なのだが、如何せん会話がふざけすぎた。しかも、二百人近い隊士達が打ち合わせをしたかのように口を揃えているのだから、十四郎がツッコまない訳がない。加えて今回はもう一人の土方も加わり、揃って怒鳴ったというお話で。昨日も、採血の際の名前と総司の一悶着を揃って止めているだけあってシンクロ度は半端なく良い。


「何で怒ってらっしゃるんですか、十四郎さん。ちゃんと伝えるべきことは伝てるんだから良いじゃないですか」

「そういう問題じゃねェんだよ。物事の始まりはしっかりするもんだろ普通。それを何で小学生の転校生紹介?ふざけんのも大概にしやがれ。しかも何であんな揃ってんだよ。気持ち悪ィから。台本読んでるみたいだから」

「君は何時からこれがアドリブだと錯覚していた?」

「残念だったな。てめェには鏡花水月は使えねぇよ」

「…君は何時から私が鏡花水月を使えないと錯覚していた?」

「錯覚してんじゃねェよ。事実を…」

「君は何時から私が鏡花水月を使えないというのは錯覚しているわけではないと錯覚していた?」

「…………ややこしいから止めようか。もう俺の負けでいいから」

「君は何時から私の言葉がややこしいと錯覚していた?」

「再現ねェなソレ」

「君は何時からこの会話に再現がないと…」

「いい加減にしろォォオ!!」


エンドレス。そんな会話に終止符を打ったのは歳三だ。てっきり部下を叱りつけるのかと思いきや、そのまま漫才を始めてしまい我慢の限界が来たらしい。とは言っても半分ぐらい呆れが入っているが。


「大体、十四郎。てめぇなにつられてやがんだ」

「わ、悪ィ。いつものクセでな…」

「……いつもなのか、コレ」

「そっちの土方さん。こんなんで呆れてちゃあ、これからついていけやせんぜ」

「主にお前にな」


間髪入れずにぴしゃりとそういい放った歳三に、珍しく総悟は目をぱちくりさせて驚いた。既にこの世界に感化されつつある彼の順応性に感心しているのだろう。総悟の側に名前が寄って私も昨日思ったと囁いているのを見れば正解に違いない。










そんな感じで異世界組の紹介を終え、無事にお開きとなった朝の定例会。広間に歳三を残し、他の人達は各隊の隊長達に着いて出て行った。


「十四郎。俺は…」

「ああ、お前今日は四楓院と外廻りだ。副長業務の手伝いをして貰うったって、ここらの地理に明るくなけりゃ事件現場の把握も出来ねぇからな」


最もらしい理由をつけてくれたものだ。納得したように頷く歳三の顔を見て名前はそう感心していた。昨日はあれだけ渋っていたのに今はそれが嘘のように協力してくれている彼の代わり身の早さに内心笑いながら。


「ありがとうございます、副長」

「寄り道はすんなよ」


広間を出て、わざわざ正門前まで着いて来てくれた十四郎に名前がお礼を言えば、返って来たのはお母さんのようなセリフ。思わず名前が苦笑いを零し、隣にいる歳三も若干呆れたような顔をしている。


「何処に向かうかご存知ないのに“寄り道”などと定義は出来ないでしょう」

「うるせェな。そういう意味じゃねェんだよ。甘味屋とか万事屋とかに寄るんじゃねぇってんだ」


甘味屋と万事屋の並列に違和感を覚えないのは何故なんだろう。そんなことを思いながらも、ここで言い返したら再び歳三に怒られそうだと判断した名前は、行ってきますと頭を下げて異世界の副長を促した。
























―何も言わないのは―

(以前、浦原に言われたからとかじゃなく)
(長年築き上げてきたものがあるから)

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