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鬼の目にも。




「先程は良く確認もしないで喧嘩越しになってしまったようで。いやぁ、喧嘩っ早い連中で申し訳ない!俺が真選組局長、近藤勲だ」

「いえ、とんでもない!前代未聞のことに巻き込まれたからと言って、不法侵入のような形になってこちらこそ申し訳なかった。俺は新選組局長、近藤勇だ」

「いえいえ、謝ることじゃありませんよ!それにしても名前は本当に似てますな」

「そうですな。私も驚きました」


ガハハと笑いながら勇さんと握手をする局長と、その両隣にいる副長と総悟の殺気がほぼなくなったのを見て、私の緊張がやっと緩んだ。千鶴とお茶を淹れてから約十分後。部屋の隅にあるTVに興味を示した彼らに、頑張って横文字を漢字に変換して説明をしていると漸く副長達が帰ってきた。文明が遥かに遅れているというのは先程確認済みだったので、私達のこの状況を一瞬で理解出来た副長はあと何分ぐらいだ?と目で聞いてきたが、激しく首を振って話を始めて下さいカロスの作った羽で空を飛んで死ね土方と返した。
だって、“この箱型映像受信兼視聴機は赤外線式小型遠隔操作機を使って電源を入れます”と言って通じるか?通じないわ。ていうか映像とか赤外線とか遠隔操作とかも通じないわ。だから全てを省いてこれは、動く紙芝居ですよと伝えて強制終了に持ち込んだ。


「近藤さん。話はそれぐらいにして、本題に入ってくれ。アンタの意見を通したいなら“それから”が時間掛かるだろうが」

「おお、すまんな。…と、その前に勇さん。ひとつ質問を良いかな?」

「なんだい?」

「ここ…俺達の世界とは本当に違う世界から来たのか?」


元来“疑う”ということを知らない局長は稀に見る良い人気質だ。が、それは裏を返せば騙されやすいということになる。最初に歳三さん達と話した時、局長を呼ばなかったのは勿論、安全性を考えてだが、もう一つ上げるとしたらコレが理由だ。…此方が真偽を確かめている最中によし。信じようなどと言われたら堪らない。副長や総悟も同じ考えだった。だから今の発言も別に疑いから来てるわけじゃない。単なる軽い確認だ。局長の声色から察するに、異世界人である、と彼らの口から直接聞きたかったようだ。なんともお気楽な。そんな私や副長の呆れ顔を余所に、局長は勇さんへにこにこと笑顔を向けている。もう一人の局長さんもこっちの局長の様子から疑われている訳ではないと分かったらしく、若干強張った表情を緩めながら頷いた。


「…ああ。到底信じられないような話だろうが、此処は俺達の住んでいた所とはまるで違う。あの“てれび”という物も初めて見た」


そう言いながら勇さんは副長達三人が並ぶ後ろに控える私の更に斜め後ろを指差す。それに同意するように頷く平助と千鶴がなんか可愛く見えた。


「近藤さんの言う通りてれびもだけど、名前ちゃんの持ってる“けいたいでんわ”ってヤツも初めて見たよ」

「それとこの天井からぶら下がってる“でんきゅう”も!行灯よりも明るいのはびっくりしたぜ」


夕方も近くなったこの時間帯。春が近いとは言え、五時半に近くなれば結構薄暗い。副長達が入って来る前に点けたのだが、部屋が一気に明るくなった時の彼らの反応と顔は一生忘れられないだろう。その様子を真子に写メ送ったろと思って、目を見開いて驚いていた一さんの顔を写メしてたら再び凄い反応が返ってきた。あれは本当に面白かった。


「名前。なんか面白いもんでも撮れたのか?」

「一さんの驚き顔。真子に送る用に撮ったんだけど」

「なら真子さんと一緒に俺にも送れ。土方の待ち受けにする」

「なんで俺だ」


くるりと後ろを向いた総悟の顔の後ろに見える一さんが恥ずかしそうに白い襟巻きに鼻を埋めているが、髪の隙間から見える耳は真っ赤だ。誤魔化せていないことは本人が一番分かっているだろうから、触れないでおこうと思う。


「さて、大分逸れましたが話を戻しましょうか。局長。副長達からも詳しくお聞きになったと思いますが、それと今の彼らの反応を見て、今一度良くお考え下さい。

…勇さんの話に、嘘偽りがあるとお思いですか?」


私の呼びかけに律儀にも後ろを振り返って聞いていた局長は、言葉が終わると同時に一瞬目を瞑った。そして再び前に向き直ると、勇さんとしっかりと目を合わせた。


「ない。はっきりそう言いきれる。勇さんの目…いや、彼ら全員の目を見れば分かる。彼らは正真正銘、異世界の“新選組”だ」

「…勲、さん…」


どこの世界でも近藤と名の付く人物は変わらないらしい。局長の言葉に勇さんは目に涙を浮かべてありがとうと頭を下げている。歳三さんも“新選組”という所に感動したようで。厳しい表情を緩めながら局長に目を向けている。その表情には感謝がはっきりと現れていた。

























―鬼の目にも…―


(泣いてねェェエ!!)
(あれ?土方さんのことだったんですか?うわー知らなかったなぁ…土方さんでも泣くんだ)
(べ、別に俺のこととは…)
(言ってるじゃねェですか。“泣いてねェェエ!!”とか言った時点で自分だと認めたようなもんでさァ)
(認めてねェ。断じて違う)
(往生際が悪いなぁ土方さんも。総悟にもバレてるみたいだし、認めたらどうです?)
(認めてみろー土方。お前になら出来る筈だァー土方)
(てめェらいい加減にしろォオ!!)
(…オイ、四楓院。なんか史上最悪なドSコンビが出来そうな気がするんだが…)
(ちょうどいいじゃないですか。副長も歳三さんと組めばいいんですよ。ドMコンビを)
(何がちょうどいいの!?)

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