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あくまで店長ですから。




「理解、出来ないと言いたげな顔じゃな」

「当然だろ。確かに可能性としてはありかもしれねェが、あまりにも都合が良すぎる解釈だ」


聞いた時から吸血鬼もどきがなんとなく異質なモノだとは思ってた。でも蛙や犬、タコが闊歩する世の中だから宇宙からの危険生物的な感じでありかなとも思ってた。それに、名前が結構動いてたからそのうち解決するとも。それを、後付けのような情報によってかなり面倒な方向に無理矢理行かせる理由が分かんねェが、残念ながら、コイツらは何の根拠もなしに口にしたり、名前に話したりはしない。今は結論しか聞いてないからさっぱり分かんねぇが、恐らく数分後には遊びのような会話によってすっきり解決してしまうのだろう。
なんか悔しい気もするが。


「“都合が良すぎる”…確かに銀時さんの言う通りっス。でも、残念ながら繋がる要因があるんスよ」

「…なんかその要因がなけりゃイイって聞こえるな」

「……気のせいっスよ」


今の喜助の言葉は嘘だ。しかも嘘だと分かるような言い方だ。…しかし同時に名前の言葉が頭に蘇った。


『喜助はね、話さないって決めたら何があっても話してくれないんだよ。だからそういう時は諦めな。いくら…仄めかされても、ね』


にしても何て目で嘘吐きやがる。アレは嘘吐く時の目じゃねェよ。でもまぁ、名前の言う事は正しい。仕方なく追求したくなる気持ちを抑え、軽く溜め息を吐きながら先を促した。


「で?何か証拠でもあんのか?吸血鬼もどきに話しでも聞いたのか?“平行世界って知ってますかー”って」

「銀時さん、惜しいっス」

「…へ?」

「その前に確認しましょ。銀時さん、吸血鬼もどきは“何人”いると思ってらっしゃいますか?」


いや、だからその昨日の夕飯何食べた?みたいな聞き方やめれ。全然知らないから。昨日の夕飯どころか今何食ってるかも知らないから。意味ありげな笑みを浮かべながらこちらを見る喜助に無意識に口元が引きるのが分かった。
ていうか何だって?吸血鬼もどきが何人いると思ってたか?
んなの一人に決まってんじゃねェか。
言い方は悪いが、殺られたのは一晩に二人まで。しかも死体発見現場は一晩に一ヶ所。バラけたことはない。複数だとは考えにくい。


「…一人、だとお考えのようですね」

「お前らは複数だと言いたいようだな」

「いえ。アタシらも“主犯は”一人だと考えてます」

「…主犯、は……?」


やたらと力が入った言葉を聞いて瞬間的に頭へよぎる考えは一つしかない。吸血鬼もどきは複数人いて、何らかの原因で一人が死んだら、代わりの奴がまたかぶき町を徘徊して血を求める。何故一人なのかは分かんねェが。


「…そうっス。“彼ら”は複数います。だけど主犯は“一人”だ」

「何でそう言い切れる」

「銀時。儂らは人間ではない。死神じゃ」

「…なんだよ今更。それに誰もお前らが吸血鬼だなんて思ってねェぞ。ちなみに俺も吸血鬼じゃねェ」

「違うわい。ちなみに儂もおぬしが吸血鬼だなんて思っとらん。何時迄その話題を引き摺るつもりじゃ…良く考えてみろ。おぬしら人間には出来ぬが、儂ら死神には出来ることを。そしてそれを使うことによって、ある情報を得られることも」


そう言って夜一は湯呑みに手を伸ばした。一気に飲み干す所を見ると、茶はもう温くなってるらしい。その湯呑みが再び彼女の手を離れて机に戻ってきた音で俺の思考回路が動いた。と、同時に俺の隣でずっと黙ってた新八が急に口を開いた。


「幽霊が見える…いや、亡くなった人の話を聞けることですか?」

「そうじゃよ、新八。おぬし状況が今一理解出来てぬ割には回転が早いのう」

「いえ、状況はもう無理矢理受け入れることにしました。なんかもう、冗談ではないようなので」


諦めたように笑いながらも、湯呑みを持つ新八の両手に力が入っているのを見て、俺は巻き込まない方が良かったかと内心舌打ちをした。新八は馬鹿ではない。寧ろ頭は回る方だ。日輪ん時も晴太の集めた金の行く先と手癖の悪ィ男について良く調べていた。今回だって冗談のような話だとは思いながらも、夜一と喜助の様子からただならぬことが起きていると受け取るのはコイツにとって難しい事じゃねェ。しかも必然的に神楽まで巻き込むことになる。
マズったか?
なんて思いながら大福を口に突っ込んだら、何故か喜助と目が合った。


「……んだよ」

「そんなに心配なさらなくてもお子さん達は弱くないでしょう」

「ぅぐっ…」

「ちょ、銀さん!?なにやってんスか!?ほら、水!!…って、違うゥゥゥウ!!それポットォオ!!」


…詰まった。そして熱かった。死ぬかと思った。頼むから超能力以上の読心術は止めて欲しい。漸く回復したところで若干涙目になりながら喜助を睨むと、笑いやがった。
死ね。


「死ね。で、その死人ってのは吸血鬼もどきとその被害者と…どっちだ?どうでもいいお前の解説はいらねェから、スパッと気持ち良く教えろ。余った時間はお前をしばくために有効活用させて貰う」

「銀さん、所々じゃなくて全面的に本音が駄々漏れです。しかもそんなの有効活用とは言いません。単なる暴力です」


新八の的確なツッコミに忍び笑いを漏らしているが、その分余計に殴り飛ばす回数が増えるだけだぞ、喜助。そんな俺の良からぬ企みに気付かぬまま、ヤツは話を進めた。


「新八さんの言う通り我々は整(プラス)と話が出来ます。そこで名前さんに真選組の隊服を借りて、“吸血鬼もどき”の方に接触してみたんス」

「…まともに会話出来たのか?」


話によれば、血を寄越せとただ繰り返すだけで精神異常をきたしているとしか思えない状態だと聞いている。そんな奴等からどうやって話を聞いたというのか。


「普通に、出来たんスよ」

「…は?」

「有り得ないとお思いでしょう。アタシとひよ里さんも最初は驚きましたが、話を聞けるなら利益はあっても損はない、といくつか口早に質問をしたんです」

「それで?」

「彼も多少混乱してましてね。中々まともに答えは返って来なかったんスが、逆にあるコトをしきりに我々に尋ねて来ました」

「…あるコト…」

「“此処は何処なんだ。京じゃないのか。しんせんぐみは何処にいるんだ”、とね」


この際、何で隊服を着てたかなんてどうでもいい。兎に角、喜助とひよ里は真選組の隊服を着ていた。にも関わらず、吸血鬼もどきは“しんせんぐみ”について尋ねてきた。十中八九、イケメン集団と同じく異世界を渡ったと考えられる。しかも“京”や“しんせんぐみ”という単語が出る辺り【同じく】ではなくて、【同じ】異世界から来た可能性がかなり高い。


「僕らは無線越しの名前さんの呟きと予想とを聞いて、完全にこの2つを繋げることが出来ました。それと、」

「…イケメン集団と吸血鬼もどきは何らかの関連性がある」

「はい。そして、その関連性は良いものか悪いものか判断しかねますが…」

「…吸血鬼もどきの騒ぎを考えると、良いものとは考えにくい。だから、銀時。おぬしには名前の羽織りを被らせたままにしたのじゃ」

「…なる程な」


あの時は兎に角、真選組と新選組の摩擦を無くすことが先決だった。俺の容姿を見て不可解な行動を取ることになったら、更に溝は深まるばかりだ。


「…にしても、相変わらずよっく回るなァ、その頭。つくづく感心するわ」


その頭に免じてさっきのはチャラにしてやらァ、と頭をがしがしと掻きながら言えば、喜助は曖昧な笑みを浮かべて湯飲みに手を伸ばした。


「アタシはまだまだっスよ。それに…」
























―あくまで店長ですから―



(それ違う漫画ァァア!!!つーかお前は悪魔じゃなくて死神だろ!?)
(いえ、あくまで店長っスから。それにアッチの死神ってみんなド近眼らしいっスよ)
(…え?じゃあ怪しいのは、)
(…リサさんと鉄裁さんっス)
(………)
(………)
(オイ、おぬしら。まさかコッチの会話が平子達に筒抜けなのを失念してる訳じゃあるまいな?)

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