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癒される。




「さてと。今からこの国の歴史背景と知らなきゃ命を落とす法律を四半刻の半分で教えます。今の現世は一歩外に出れば次には綺麗なお花畑と日本三大清流を上回る川が広がるんで」

「オイちょっと待て。今コイツとんでもねェことさらっと言いやがったぞ。しかも四半刻の半分って…人の生死に関わるなら半刻はかけて説明しやがれ!!」


ナイスツッコミありがとうございます。流石に土方の名を名乗ってるだけあるな。…でもちょっとクドいかも。

“歳三さんは異世界から来ました”宣言は、真選組も新選組も案外すんなりと受け入れてくれた。まぁ私の説明が良かったんだと思う。これも小さい頃からベラベラとよく口の回る喜助の側で遊んでた賜物かなと少し感謝しておいた。


「でも…ほら、なんかアレなんで」

「アレってなんだ、アレって」

「アレって…えーっと、こないだのアノ時にあったソレですよ」

「ああ、ソレな…って分かるかァァア!!」


いや…ほんとこの人、土方さんだよ。しかもノリツッコミっていう高度な技まで習得済みとは。


「恐れ入りました」

「オイ、ふざけんのも大概にしろ。十四郎達が出てった途端に投げやりになりやがってなんなんだよテメーは」

「真選組副長護衛兼補佐、四楓院名前でありんす。どうぞ、よしなに」

「そういう意味じゃねぇ」


話を少し本線に戻し、“十四郎達”の行方だが、歳三さんの言葉にあったように今ここにはいない。両者の摩擦がなくなり、互いに自己紹介をした後、浮上した問題の対策の為に一時退室しているのだ。副長と総悟は局長の所へ、退は屯所内に残っている隊長達を集めに、銀時は私の羽織りを被ったまま万事屋へ。銀時に至っては単に帰っただけだが、他三人は新選組の処遇について動き始めたので結構真面目な顔をして出て行った。ちなみに私は事前に副長に“隊士でいいでしょう。彼らの腕を見たいなら私が実戦を引き受けまするめを喉に引っ掛けて死ね土方”というメールを送っている。真面目な顔をして出て行ったのだ。どうやら歳三さんはそんな中、私がふざけたことが気に入らなかったらしい。というか私はふざけた気持ちは更々ない。それ程までに危険だということを主張してみたのだが、彼には伝わらなかったようで。何が珍しいのか部屋の中をキョロキョロとしている新選組達に軽く溜め息を吐くと、話しますよと強めに言って耳のピアスに触れた。


「あ、ああ…頼む」

「はい。では確認ですが、皆さん達がいた所は日本で間違いないですか?」

「ああ。俺らは日本の京にいた」


京、ね。こっちじゃ高杉が幕府…主に真選組の目を逃れる為の潜伏場所として有名な土地だが、彼らの世界では新選組がいたようだ。
世界は分からないものである。


「此処は話しました通り、江戸です。この屯所からも見えますが、江戸城には現将軍徳川茂々様がいらっしゃいます」

「俺らは家茂公だったな」

「そうですか…そこも違う、と」


徳川は一緒。身に付けている着物も此処と一緒。少し前まで遡らせて見れば、奈良、平安、鎌倉、室町時代の天皇や活躍した武士達は皆同じだった。歳三さん達の世界は、ほんの少しの差異によってしかも極最近の差異によって違えることとなった世界なのだろうが、大体その差異は話していくうちに簡単に分かった。
天人襲来である。
まず部屋の天井にぶら下がっている電気を知らない時点で怪しいとは思っていたが、水道、ガス、電話など。天人が来てから異例の早さで普及した文明を一切知らないと言ったのだ。どうやら彼らの世界にも鎖国中に黒船なるものが浦賀に来たらしいが、こちらは天人が来ている。

彼らの世界との分岐点は“天人”にあった。


「…その天人が来てから約二十年間に渡り、この国は戦乱の世と化した」

「戦乱!?」

「なんでだ?だってこんなにも便利な文明を与えてくれたんだろ?」

「当初は何が目的だかよく分からなかったからね。幕府の連中は知らんが、少なくとも侍達は危機を覚えた。彼らの日本侵略に、ね。その侍達が起こした戦争…後に攘夷戦争と呼ばれるものが、つい数年前までは行われていた。

…まぁ、誰だって危機感は覚えるでしょう。自分と全く違う姿形の生物がでっかい大砲を撃ち込んで来たら」


反論するように声を上げた平助と新八さんに苦笑いをしながらそう言うと、二人は罰が悪そうに口を噤んだ。この攘夷戦争。実を言うと、私とリサと白はある時期ほんの少しだけ尸魂界の資料集めの為に指令を受けて参加していた。と言っても、全員バラバラの時期だったし、現世駐在任務中の合間に暇を見つけて適当に人間の命を守ってたぐらいだから参加と呼べるかどうか分からないが。
だが、惨状は見た。私は一番後期に来たからより酷かったのかもしれない。あれは、尸魂界とは無縁の世界だった。今でも鮮明に思い出せる。


「……それで、侍達は…」

「負けた。まぁ、元から負け戦と言われてましたから、それで二十年はよく粘った方ですよ。……でもその終わらせ方は酷かった」

「…どうやって…」

「天人の力に恐れを成した幕府は不平等条約を締結。更に廃刀令を出して、侍達からその武器を…魂を奪った」


これには彼らも揃って息を飲んだ。刀を振るえない世の中など信じられないのだろう。そして、勘のイイ奴ならこの時点で“あること”に気付く。その思惑を見事に実現してくれた二人のうち、一さんが先に口を開いた。言わずもがな、もう一人は歳三さんだ。


「ならば何故あんた達は刀を持つことが出来る?」

「流石に良いところに気付きますね、一さん。廃刀令でも幕府系列の機関と幕府に帯刀許可を得ている者なら持つことが出来るんです」

「それ以外の者は…」

「持つことは愚か、腰に差すことも許されない。だけど、それに逆らって腰に差してる連中もいるんですよ」

「…誰だ?」

「攘夷戦争後もその志を捨て切れず、天人排斥・打倒幕府を企む、“攘夷浪士”と呼ばれる連中です」


そう言うと、歳三さんが納得したようになる程なと呟いた。


「…だから十四郎はあんなに殺気立ってたのか」

「そうです」

「…の割に名前ちゃんは途中から全然殺気なかったけど?」

「なんとなく違うと思ったんですよ。…あなた達からは十四郎さん達と同じ匂いがしたので」


ほんとはちゃんと理由があるんだけど、非常に面倒だから割愛することにした。まぁ強ち嘘でもないしね。曖昧な返答だったのだが、総司さんは取り敢えず引き下がることにしてくれたらしい。ふーんと言って何だか意味ありげな笑みを浮かべるだけに留めた。不気味だ。


「言っておかなければならないことはこれぐらいです。何かご質問はありますか?」

「…ねェな」

「じゃあ、後は十四郎さん達が来るまでお待ち下さい」


とは言ったものの、副長が帰ってくる気配がない。新選組が部屋の隅にあったテレビをつけて騒いだり、電気を物珍しそうに眺めたりしているのを見て子供みたいだなと笑うと、お茶でも淹れて来ますねと言って立ち上がった。…が、隣の千鶴も何故か一緒に立ち上がっていた。


「……自分、どないした?厠か?」

「そ、そんなんじゃありません!!な…なにかお手伝い出来ればと思って…」


びっくりして思わず関西弁が出てしまった。ついでに余計な一言まで付け足してしまった。だが、現世に来てからずっと男所帯の中、尸魂界にいた時も周りの女性は、平気で全裸で歩く夜一と、平気でエロ本を読み漁るリサと、平気で放送禁止用語を吐くひよ里と、平気でその全てを受け入れて面白いと無邪気に笑う白だ。つまり、何が言いたいかは察してくれ。


「あはは、そうだよねぇ…じゃあ、すぐそこに簡易キッチ…台所があるから一緒に行こうか」

「はい!!」


一応貴族育ちである筈の私の口から出た言葉は聞かなかったことにしてくれたらしい。満面の笑みで返事をした千鶴は向日葵のようだった。





























―癒やされる―



(癒やされねェェエ!!)
(どうかしやしたか?土方さん)
(このメール見てみろ。まるでお前の双子のようだ)
(…あーこれ、今名前と土方撲滅キャンペーンで、語尾に土方撲滅を意味するお通語を付けてメールするってサービスをやってんでさァ。中々好評ですぜ)
(それはサービスとは言わねぇ。いじめと言う)

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