誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-01


私はフリーア王国第三王女、レン・スラーメリー=アルハリーム。
国王の命で、私の7人の眷属のうち、ルシアとロゼの二人を連れ、バルバッド王国へと辿り着いた。
しかし…

「ひ、酷い……」

「この国で一体何が…?」

私達の目に映ったものは、変わり果てた交易国の姿。
東南随一を誇る貿易国の活気があった港は静まり返り、道行く人の疲れた様子が目立つ。
少し裏通りに目をそらせば、路頭に迷う貧者達のスラム街。
こんな酷い惨状は今まで見たことがない…

「?レン様」

黙ったままの私に不安になったのか、心配そうに私を見上げるロゼの声で我に返る。
そうだ、こんな所で突っ立っている場合ではない。

「王宮からの使者はまだ現れないの?」

「はい。あの、レン様、あたしが・・・ロゼが様子を見てきましょうか?」

「そう・・・ね」

この国はおかしい。
いつ暴動が起き、王権が崩れてもおかしくはない。
いや、もう暴動なんてとっくに起きているかもしれない。
婚約の祝いだのそんな場合ではない、アブマドに事の詳細を聞き出さなければ・・・

「ロゼ、待って」

「レン様・・・?」

「使者の到着を待っている時間はないわ。ルシア、ロゼ、急いで王宮に向かいましょう!アブマド王にこの国の現状を確かめます!」


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