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「キノコと戯れるって何?他人に興味なさそうな風貌なのに陸の生き物に興味津々とか可愛すぎる。キノコの世話をするアイツを偶然この前、見かけたけど、めっちゃ嬉しそうな顔しながら、キノコに微笑みかけていた横顔に心臓発作で止まるかと思ったわ。もうね、顔面が凶器!声が武器!存在が罪!大罪!ギルテイ!同じ空間にいるだけで、どうかしちゃいそう。毎日が献血日。毎日が命日で毎日がハッピーバースデー!棺とバースデーケーキが来い。あと病院も」
「うわ、始まったー。モナのジェイドコール」
「もうここまで来ると病気ですね。そんなに彼のことが好きならば、さっさと告白すればいいじゃないですか。毎日のように聞かされているこちらの身にもなってください」
「いーじゃん。別に。モナが真っ赤になって、馬鹿騒ぎしているの面白いし。ねえねえ、今日はどんなことがあったの?」

と、いつの間にか隣に座っていたフロイドが頬杖をつきながら、問うてきた。対するアズールは何度言っても私たちが掃除をしないことに諦めを感じたのか、やれやれと首を振りながらも向かいのソファに座り、何やら小難しい書類を片手に睨めっこ。おそらく、お店の経営に関する記事を見ているのだろう。私には全くもって関係ない話だが。

「いや、もうほんとにヤバかった。ヤバかったとしか言いようがない。聞いて驚け?人生初の顎クイってやつを経験したんだよ。どうだ羨ましいだろ」
「顎クイ?何それ」
「相手の顎を掴み、そっと持ち上げることです。特に男性が女性に対して、使うもので、壁ドンと併用して使われるお決まりのシチュエーションですね」

興味なさそうな顔しておきながら、聞いていたのかよ。なんて心の中でツッコミを入れる。


「ふーん。オレにはよくわかんねえや」
「やけに詳しいね。もしかして、興味あるの?良かったら、貸してあげようか?イケメン御曹司四人組と一般庶民女子高生が繰り広げる胸キュン不可避の究極の漫画全巻を今なら―――」
「結構です」
「わお。清々しいまでの即答ぶり」

けっ、ちくしょう。せっかく布教できるかと思ったのに。
やっぱり男子じゃ無理か。恋愛になんてこれっぽっちも興味を示やしない。

「いや、もうこっから先が本題で。しかもペンでクイって顎を持ち上げたんだよ?は、もうやめろ!心肺停止のお知らせ。どこで、そんなテクニックどこで覚えたんだよ!私は君をそんな子に育てた覚えはない!」

この膨れ上がって縮むことのない感情をどこに当てればいのかわからなくなった私はまたしても腕の中のクッションを締め上げる。すると、アズールがあからさまな顔で、潰れるから止めろと注意してきたから、じゃあ、代わりにアズールを抱きしめていいかと冗談で尋ねたら、真に捉えてしまったようで、嫁入り前の娘が……!と今時漫画でも見ないようなセリフを口にしてきたから正直ビビった。

「……全く。貴方、そんなに愛を語れるのだったら、直接本人に言えばいいじゃないですか」
「そーそ。そのほうがジェイドも喜ぶと思うよ」
「ばっきゃ野郎。告るわけないじゃん。なんであんなヤツに『貴方の番になりたいでえす。ラブ注入』とか『二人で幻の海の宝石を探しに行こう☆』とか『貴方のせいで恋の酸欠状態』みたいなこと言わなきゃならないのよ」
「なんとまあ、いかにも頭の悪そうなタイトルだとこと」
「即興で考えた割にはラノベ感あってよくない?それを頭の悪いとか。名誉毀損で訴えたろか」




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