新たな旅立ち

「名前、貴女本当にここに残るのね?」
「うん、こんな足じゃサッカーできないから強化委員なんて肩書き背負ったところでたいした指導も何もできないし」
「…そう、」
「結局どう転んでも皆んなと離れちゃうんだ。あたしは…この雷門メンバーでサッカーしたい。だからあたしのサッカーはとりあえずここまで」
笑った名前を眉間にしわを寄せて夏美は見つめた。


「名前、雷門を頼む」
「頼むって言われても一旦休部になるからなんとも言えないけどねー」
嫌だ、皆んなと離れたくない。それが本音。
ワガママだろうが、日本のサッカーの為だとかそんなもん振り払って引き止めたい。
もしこれが、卒業して進路とかで別々の高校に行くとかだったらまだよかったんだろう。だがしかし、これはサッカー協会がいきなり決めていきなり取り組み始めたものだ。気持ちの整理もなにも追いつかなかった。

「名前は帰んないのか?」
「部室掃除してから帰るよ、皆んな明日からそれぞれのとこ行くから忙しいでしょ?ほら行った行った!」
これぐらいがいいんだ。
また明日ねーってぐらいがいいんだ。そして明日になって後悔すればいい。
少しでも気持ちがブレると涙が出そうになる。グッと奥歯を噛み締めてみんなに笑顔を向け見送る。


せっせとホコリを払い箒で砂を外に出していると部室ががらりと開けられた。
振り向けばジャージ姿の円堂がいた。
「あれ?円堂?」
「よ!」
「あんた明日から引っ越しでしょ?まだここに居て大丈夫なの?」
「いやぁさ、行く前にやっぱ俺達ここでサッカーしたくなってよ」
「ん?"俺達"?」
「ほら!行くぞ!!」
「ちょ!円堂!!」
腕を引かれて来たのは何時もの河川敷

「遅かったな」

「え、なにこの勢揃い」
そこには雷門イレブンとマネージャーが勢揃いしていた。
「旅立つ前にサッカーしようぜ!」
円堂のその言葉に皆んなが「おう!」と答えた。
人数は少ないものの賑やかに紅白戦が始まった。その顔にはサッカーを心から楽しんでいるように見えた。

「いいね、皆んなのサッカーは見ている人も胸を熱くさせるサッカーだ」
「はい!胸がワクワクします!」
「そうよね、いつでもガムシャラで前を見てて応援したくなっちゃう」
「これも円堂くんの影響の強さね」
マネージャー3人たちと話していると段々と胸が熱くなり居てもたってもいられずグラウンドへと走り出した。

「え、ちょっと名前!!」
その夏美のあげた大声になんだなんだとグラウンドにいたみんなもこちらを振り返った
が、走りこんでくる名前の姿にギョッとするものも居れば笑って迎えてくれる者もいた。

「は?え、名前」
「お前なにして!!」
「全く、あいつは」
「宍戸!!ボールちょおおおだあぁあい!!」
「は、はい!」

宍戸からパスをもらいそのままシュート体勢に入る。

「いっけぇぇ!!」

「はは!そうこなくっちゃな!!」
《ゴットハンド!!》
渾身のシュートはあっさり円堂の必殺技によって止められた。
悔しさを感じているとつま先からふくらはぎを伝ってビィィンと痛みが走る。
「あいたたた、やっぱまだ本調子じゃないやぁ」
「全く、無茶をするな馬鹿」
苦笑いで手を差し伸べてくる豪炎寺の手を取り立ち上がる。
「無茶してでもみんなと一緒にサッカーしたくなっちゃったんだって」
そう、皆んなのこのサッカーは人を惹きつける
「お前の無茶に俺たちは助けられたからな、選手として、最後まで食いついてくれた。その足を犠牲にしてまで、そのおかげで世宇子の突破口が見えて優勝の鍵となった」
「っ、ちょ、いま良いこと言わないで、」
グッと噛み締めて涙が溢れそうなのを耐える。
「今は俺達しか居ないんだお前の本心聞かせてくれ」
その言葉に我慢の堰が外れた。
「っ〜〜!本当はっ!!最後の1年だから"皆んなと"サッカーしていたいっ、全国のレベルを上げる為なんて知るかっ」
不安と共に涙が溢れ出す。
「染岡は北海道だし、夏美とかは海外だよ!?簡単に会えないじゃんか〜〜!!」
「きったねぇな」
「うぇっぷ、だって、だってぇ!!」
笑いながら顔面にタオルを押し付けてくる染岡。それをうけ取って涙を拭く。
ついでに鼻水も拭いておいた。
タオルから顔を上げれば
何時ものような太陽のような笑顔の円堂がそこにいた。
「一旦は離れちまうけど雷門の、このメンバーのサッカーは無くならない。チームは違うけど敵同士だけど一緒にサッカーできる!だから、また、サッカーやろうぜ!」
「う"んっ…!足治ずっ!皆ん"な、い"っでらっじゃい"」
「よく泣くなお前は」
ふっと笑いをこぼす鬼道にジト目で受け答える。
「そのご自慢のマントで、鼻水拭くぞ」
「やめろ」
「幸い近いやつもいたりするだ。寂しくなったら練習見に来ればいい」
「じゃあ毎日、風丸に会いに行くっ」
「それは困ったな」
「え、待って拒否?」
「ま、帝国には源田居るしな」
「ん?なんで今源田が出てくるの?」
ニヤニヤと笑う風丸と鬼道にちょっとイラッと来たので軽くパンチを食らわすもあっさりと避けられた。

何時ものような雰囲気に戻ってきて笑顔が戻ってくる。

「次、みんなに会えるの楽しみにしてるから」心残りはまだわずかに在るものの次なる成長を期待し笑顔を作る。
「あぁ!!またサッカーしような!!」
円堂が拳を突き出しそれぞれ皆んなも突き出してくる。
それに習って笑顔で拳を突き出した。



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bkm

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