暴君スパイラルアタック
「なあなあなあなあなあなあなあなあなあ」
「聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない」
足早に廊下をスタスタと歩くがそいつも同じスピードで隣を歩き続ける。
しきりに声をかけられるも関わったら最後なのでこちらも聞こえないと応戦をする

「丼!!」
やつがこちらを覗き込んできたのでグリンっと勢いよく反対側に顔をそらす。それでも足は止めない。止まるんじゃねぇぞ…って誰かが頭の中で囁いてる。
「見えてない見えてない見えてない見えてない見えてない」
そんなことを数秒行なっていると
「むぅ!!そんなに無視されると流石の私でも傷つくぞ!!」
「ふぎゅあっ!?」
いきなりの横からの圧迫。
いや、抱きつかれたのである。

「聞いているのか!!」
「ふばばば!!!ギブギブギブ!!!苦じいぃっ!!」
ギュゥッと可愛らしい音では片付けられないミシミシと骨がなり上半身と下半身がサヨナラしそうになったので無視するという事を諦めた。
「な"な"まづぜんばいごんに"ぢわ"」
「おう!あと私はな"な"まづではない七松だ!」
挨拶をすれば奴、七松小平太先輩はニッカリとそれはそれは嬉しそうな笑顔が返ってくる
「離じでぐだざい"」
「ん?おう!すまんすまん!余りにもお前が私を無視するもんだからな!とりあえず裏山に行くぞ!!」
「ひぇっ」
そのまま離してもらえるかとおもったら絞められている腕の力が少し緩められただけでそのまま俵のように担ぎ上げられる。
「ぎゃぁぁあ!!!」
「いけいけどんどーーん!」
人1人を担いでるとは思えないスピードで走り出す七松先輩に周りは今日もか〜と哀れみの視線を寄越してくる。ダレカタスケテ。
ぐるぐると変わる風景に吐き気を催した瞬間急ブレーキがかけられた身体がガクンっと衝撃が来た。
「到着〜!!」
「うぅ、今日は、なんの、ご用件で…」

「丼!」
「はぶべっ」

ものすごい力で引き寄せられ顔は七松先輩の15歳とは思えない鍛え抜かれた胸板雄っぱいへとご招待された。
何が悲しくてくのいちのおっぱいではなく忍たまの硬い胸板に顔を埋めなきゃならんのだ。

「丼、返事はいつ返してもらえる」

「いや、あのぉ、毎日言わせていただいてますがお断りしてますよね?」

「言い直そう!いつになったら私を好いてくれる!」

そう、わたしくのいちの教室5年みょうじ丼は何故か知らないが新学期に突入してからというもの忍たまの6年七松小平太先輩に見染められ
朝から晩まで猛アタックならぬ猛タックルの嵐。

「七松先輩…三禁をお忘れにはなっておりませんか?」
「大丈夫だ!丼以外には惚れない!」
とんでもなく頓珍漢な答えに頭痛がしてくる。
「忍者同士の夫婦だっているんだ。将来を誓い合えばさほど問題はない」
暴走列車七松先輩は細かいことは気にしないが決して馬鹿ではない。
この何度もお決まりのようにグイグイと七松先輩は攻めてくる。
ちょっと近いですって、貴方一応顔良いんですから自覚してください。
「いや、でも、わたし、七松先輩のことよく知りませんし、何故わたしなのかもわかりません。」
知ってるのは体育委員会委員長暴君というぐらい。それくらい本当に交流はなかった。
「?お前なのかな理由を言えば頷いてくれるのか?」
「そういう訳でもないんですけど、やはり、好意を寄せられているからにはなんですすす好きになったのかとかどこをその、すすす好きなのだとか、知りたいなぁ…って」
「うーん、そうだなぁ…」


「ま!細かいことは気にするな!」

ズッコけた。
にぱっと、すごくいい笑顔で言い切った彼に頭が痛くなる。なんでここでも"細かいことは気にするな"が発動するのだろう。
だが安心した矢先彼からとんでもない言葉が放たれた。

「だって、私がお前に惚れたのはつい最近ではなく2年ほど前からだぞ?そんな昔のことは忘れた!」
「にっ!?へ!?はぁ!?」

2年…?に ね ん ま え !?

ずっこけて尻もちをついたままのわたしは目の前の七松先輩を見上げる。
そんかわたしに彼はしゃがみ込み目線を合わせてぐしゃぐしゃと撫で回す
「強いて言うならその根性だな!」

「根性…」

「そうだ!くのたまとは思えぬ根性!そう言うところが好きだ!」

「はぁ…ど、どうも…」

根性。

わたしにとってはそれしか取り柄がないわたしを苦しめるものでもある。

「私のことはこれから知っていけばいい!」

な!っとぐりんぐりんとさらに激しく撫で回される。首取れそう大丈夫?繋がってる?

「諦めて私と恋仲になってくれ!」
「うぅ、お断り…」
「させん!」
「ふべっ」
ムギューーーーーっと抱きしめられまた逞しい雄っぱいに顔を押し付けられ言葉は遮られた。
肺にいっぱい土の匂いとかお日様の匂いとかが満たされる。
「七松先輩強引ですね」
「強引に行かないとお前は捕まらないだろう?」
中々に七松先輩の押しに絆され始めている自分が怖い。

「無理強いはしたくない、が、つまみ食いくらい許されるだろう」
「え」
ベロリとそりゃもう唐突に首を舐めはじめた。

何してんだこいつ!?!?

「なっなな、ななまつ、せんぱっ」
「丼の匂いは落ち着くな」
「ひっ」

喰われるのでは!?と物理なのか貞操の危機なのか色んな考えが巡ったが七松先輩の背後に大きな影ができた。

「小平太、やめろ」
「あだーーーーっ!!」

ゴチーーーーンっととっても痛そうな一撃が彼の頭に落ちた。そして視線を上に上げるとそこには学園一無口と言われる男が偉く恐ろしい顔で立っていた。


「な、中在家しぇんぱぁぁい!!」
「よしよし、」
するりと七松先輩の拘束から抜け中在家先輩の元へと逃げる。

「長次ズルイ!!!丼!私の胸に飛び込んでこい!」

「遠慮します!!!」


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bkm
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